一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益の算定方法

(平成9年1月28日最高裁)

事件番号  平成5(オ)2132

 

この裁判では、

一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される

外国人の逸失利益の算定方法について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

財産上の損害としての逸失利益は、

事故がなかったら存したであろう利益の喪失分として

評価算定されるものであり、その性質上、

種々の証拠資料に基づき相当程度の蓋然性をもって

推定される当該被害者の将来の収入等の状況を基礎として

算定せざるを得ない。

 

損害の填補、すなわち、あるべき状態への

回復という損害賠償の目的からして、

右算定は、被害者個々人の具体的事情を考慮して

行うのが相当である。

 

こうした逸失利益算定の方法については、

被害者が日本人であると否とによって

異なるべき理由はない。

 

したがって、一時的に我が国に滞在し将来出国が

予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、

当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、

その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠を置いて

就労することになるか、などの点を証拠資料に基づき

相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、

将来のあり得べき収入状況を推定すべきことになる。

 

そうすると、予測される我が国での就労可能期間ないし

滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、

その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として

逸失利益を算定するのが合理的ということができる。

 

そして、我が国における就労可能期間は、

来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、

在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、

就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な

諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。

 

在留期間を超えて不法に我が国に

残留し就労する不法残留外国人は、

出入国管理及び難民認定法二四条四号ロにより、

退去強制の対象となり、最終的には我が国からの

退去を強制されるものであり、我が国における滞在及び就労は

不安定なものといわざるを得ない。

 

そうすると、事実上は直ちに摘発を受けることなくある程度の

期間滞在している不法残留外国人がいること等を考慮しても、

在留特別許可等によりその滞在及び就労が合法的なものとなる

具体的蓋然性が認められる場合はともかく、

不法残留外国人の我が国における就労可能期間を

長期にわたるものと認めることはできないものというべきである。

 

慰謝料額の算定は、原則として、原審の裁量に属するところ、

所論は、上告人には、日本人以上の慰謝料額を

認めるべき事情がある旨主張するが、

一部は原審の認定しない事実を前提とするものであるほか、

その主張するところをもってしても、

日本人以上の慰謝料額を認めなければならない

事情があるということはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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