人身傷害保険における保険代理の範囲

(平成24年2月20日最高裁)

事件番号  平成21(受)1461

 

この裁判では、

自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である

被害者に過失がある場合において上記条項に基づき

保険金を支払った保険会社による

損害賠償請求権の代位取得の範囲について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件約款によれば,上記保険金は,

被害者が被る損害の元本を塡補するものであり,

損害の元本に対する遅延損害金を

塡補するものではないと解される。

 

そうであれば,上記保険金を支払った訴外保険会社は,

その支払時に,上記保険金に相当する額の

保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の

支払請求権を代位取得するものであって,

損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を

代位取得するものではないというべきである。

 

本件約款によれば,訴外保険会社は,

交通事故等により被保険者が死傷した場合においては,

被保険者に過失があるときでも,

その過失割合を考慮することなく算定される額の

保険金を支払うものとされているのであって,

上記保険金は,被害者が被る損害に対して

支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損を

その過失の有無,割合にかかわらず塡補する趣旨・目的の下で

支払われるものと解される。

 

上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと,

本件代位条項にいう

「保険金請求権者の権利を害さない範囲」との文言は,

保険金請求権者が,被保険者である

被害者の過失の有無,割合にかかわらず,

上記保険金の支払によって民法上認められるべき

過失相殺前の損害額(以下「裁判基準損害額」という。)を

確保することができるように解することが合理的である。

 

そうすると,上記保険金を支払った訴外保険会社は,

保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,

上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の

損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,

その上回る部分に相当する額の範囲で

保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を

代位取得すると解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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