自動車損害賠償保障法72条1項前段による請求権の消滅時効の起算点

(平成8年3月5日最高裁)

事件番号  平成4(オ)701

 

この裁判では、

ある者が交通事故の加害自動車の

保有者であるか否かをめぐって争いがある場合における

自動車損害賠償保障法72条1項前段による

請求権の消滅時効の起算点について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件規定による請求権は、

不法行為による損害賠償請求権とは異なり、

その消滅時効は民法166条1項の規定により

権利を行使することを得る時から進行する。

 

ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって、

右の者と当該交通事故の被害者との間で

自賠法3条による損害賠償請求権の存否が

争われている場合においては、

自賠法3条による損害賠償請求権が存在しないことが確定した時から

被害者の有する本件規定による

請求権の消滅時効が進行するというべきである。

 

けだし、(一) 民法166条1項にいう

「権利ヲ行使スルコトヲ得ル時」とは、

単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく、

さらに権利の性質上、その権利行使が

現実に期待のできるものであることをも

必要と解するのが相当である

(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・

民集24巻7号771頁参照)、

(二) 交通事故の被害者に対して損害賠償責任を

負うのは本来は加害者であって、本件規定は、

自動車損害賠償責任保険等による救済を受けることができない

被害者に最終的に最小限度の救済を与える趣旨のものであり、

本件規定による請求権は、自賠法3条による

請求権の補充的な権利という性質を有する、

(三) 交通事故の被害者に対して

損害額の全部の賠償義務を負うのも加害者であって、

本件規定による請求権は、請求可能な金額に上限があり、

損害額の全部をてん補するものではない、

(四) そうすると、交通事故の加害者ではないかと

みられる者が存在する場合には、

被害者がまず右の者に対して自賠法3条により

損害賠償の支払を求めて訴えを提起するなどの

権利の行使をすることは当然のことであるというべきであり、また、

右の者に対する自賠法3条による請求権と

本件規定による請求権は両立しないものであるし、

訴えの主観的予備的併合も不適法で

あって許されないと解されるから、

被害者に対して右の二つの請求権を

同時に行使することを要求することには無理がある、

(五) したがって、交通事故の加

害者ではないかとみられる者との間で

自賠法3条による請求権の存否についての紛争がある場合には、

右の者に対する自賠法3条による

請求権の不存在が確定するまでは、

本件規定による請求権の性質からみて、

その権利行使を期待することは、

被害者に難きを強いるものであるからである

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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