インサイダー取引規制の効力

(平成28年11月28日最高裁)

事件番号  平成27(あ)168

 

この裁判では、

情報源が公にされることなく会社の意思決定に関する

重要事実を内容とする報道がされた場合における

金融商品取引法(平成23年法律第49号による改正前のもの)

166条1項によるインサイダー取引規制の効力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

3(1) 法166条4項及びその委任を受けた施行令30条は,

インサイダー取引規制の解除要件である

重要事実の公表の方法を限定列挙した上,

詳細な規定を設けているところ,その趣旨は,

投資家の投資判断に影響を及ぼすべき情報が,法令に従って

公平かつ平等に投資家に開示されることにより,

インサイダー取引規制の目的である市場取引の

公平・公正及び市場に対する投資家の信頼の確保に資するとともに,

インサイダー取引規制の対象者に対し,

個々の取引が処罰等の対象となるか否かを

区別する基準を明確に示すことにあると解される。

 

(2) 施行令30条1項1号は,重要事実の公表の方法の1つとして,

上場会社等の代表取締役,執行役又は

それらの委任を受けた者等が,当該重要事実を所定の報道機関の

「二以上を含む報道機関に対して公開」し,かつ,

当該公開された重要事実の周知のために

必要な期間(同条2項により12時間)が経過したことを

規定するところ,前記(1)の法令の趣旨に照らせば,

この方法は,当該報道機関が行う報道の内容が,

同号所定の主体によって

公開された情報に基づくものであることを,

投資家において確定的に知ることができる態様で

行われることを前提としていると解される。

 

したがって,情報源を公にしないことを前提とした

報道機関に対する重要事実の伝達は,

たとえその主体が同号に該当する者であったとしても,

同号にいう重要事実の報道機関に対する

「公開」には当たらないと解すべきである。

 

本件報道には情報源が明示されておらず,

報道内容等から情報源を

特定することもできないものであって,

仮に本件報道の情報源が施行令30条1項1号に該当する者であったとしても,

その者の報道機関に対する情報の伝達は情報源を公にしないことを

前提としたものであったと考えられる。

 

したがって,本件において同号に基づく報道機関に対する

「公開」はされていないものと認められ,

法166条4項による重要事実の「公表」があったと認める余地もない。

 

(3) また,所論がいうように,法令上規定された

公表の方法に基づかずに重要事実の存在を推知させる報道がされた場合に,

その報道内容が公知となったことにより,

インサイダー取引規制の効力が失われると解することは,

当該報道に法166条所定の「公表」と

実質的に同一の効果を認めるに等しく,かかる解釈は,

公表の方法について限定的かつ詳細な規定を設けた

前記(1)の法令の趣旨と基本的に相容れないものである。

 

本件のように,会社の意思決定に関する重要事実を

内容とする報道がされたとしても,

情報源が公にされない限り,法166条1項による

インサイダー取引規制の効力が失われることはないと解すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事