従業員持株制度と株式の譲渡

(平成7年4月25日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1332

 

この裁判では、

従業員持株制度と株式の譲渡について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

所論の点に関する原審の事実認定は、

原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。

 

右事実関係によると、(一) 被上告会社は、

その定款によって株式の譲渡制限を規定している株式会社であるところ、

昭和43年ころ、従業員に被上告会社の株式を取得させることにより、

従業員の財産形成とともに、会社との一体感を強めて

その発展に寄与させることを目的として、

いわゆる従業員持株制度を導入した、(二) 上告人らは、

いずれも被上告会社の従業員であったが、

昭和43年ころから昭和54年7月3日にかけて、

右制度の趣旨、内容を了解した上で

被上告会社の株式を額面額で取得し、その際、

被上告会社との間で、退職に際しては、

同制度に基づいて取得した株式を額面額で

取締役会の指定する者に譲渡する旨の合意(以下「本件合意」という。)をした、

(三) 昭和61年5月3日、被上告会社の

全従業員約40名中営業担当の23名の従業員のうち、

上告人らを含む12名が退職したが、被上告会社は、

右の一斉退職等に伴う混乱等のため、取締役会において、

上告人らの有する株式の譲受人を直ちには指定せず、

昭和63年7月11日に譲受人としてDを指定し、

同人は、買受けの意思を明らかにした上、

同月20日から22日にかけてその代金額を供託した、

(四) 被上告会社は、昭和43年度以降、

当初はおおむね15ないし30パーセント、

昭和56年度から昭和60年度は8パーセントの割合による

株式配当を行っていた(昭和61年度は株式配当をしていないが、

これは右の一斉退職等に伴って

営業上壊滅的な打撃を受けたためである。)、

というのである。

 

右事実関係及び原審の説示するところに照らせば、

本件合意は、商法204条1項に違反するものではなく、

公序良俗にも反しないから有効であり、

被上告会社の取締役会が、

本件合意に基づく譲受人としてDを指定し、

同人が買受けの意思を明らかにしたことにより、

上告人らは被上告会社の株式を喪失したとして、

株券の発行を求める上告人らの請求を棄却すべきものとした

原審の判断は、正当として是認することができる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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