有限会社の社員総会決議不存在確認を求める訴えの提起が訴権の濫用にあたるとされた事例

(昭和53年7月10日最高裁)

事件番号  昭和52(オ)1321

 

この裁判は、

有限会社の社員総会決議不存在確認を求める訴えの提起が

訴権の濫用にあたるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

被上告人が前記各社員総会決議の不存在の確認を求める本件訴を

提起したのは、前記社員持分譲渡の合意がされてから

約三年を経たのちのことである。

 

以上の事実関係のもとにおいて、原審は、

本件社員総会決議が会社経営の実権の移転という

重大な事項にかかわるものであり、かつ、

その決議に関する比較的軽微な瑕疵の存否ではなく、

決議の存在そのものが問題とされている以上、

被上告人の本件訴の提起を権利の濫用であるとして

排斥することはできないとし、被上告人の本訴請求を認容した。

しかしながら、被上告人は、相当の代償を受けて

自らその社員持分を譲渡する旨の意思表示をし、

上告人会社の社員たる地位を失うことを承諾した者であり、

右譲渡に対する社員総会の承認を受けるよう努めることは、

被上告人として当然果たすべき義務というべきところ、

当時Dと共に一族の中心となって

上告人会社を支配していた被上告人にとって、

社員総会を開いて前記被上告人らの

持分譲渡について承認を受けることは

きわめて容易であったと考えられる。

 

このような事情のもとで、被上告人が、

社員総会の持分譲渡承認決議の不存在を主張し、

上告人会社の経営が事実上I夫婦の手に委ねられてから

相当長年月を経たのちに右決議及びこれを前提とする

一連の社員総会の決議の不存在確認を求める本訴を提起したことは、

特段の事情のない限り、被上告人において何ら正当の事由なく

上告人会社に対する支配の回復を図る意図に出たものというべく、

被上告人のこのような行為はI夫婦に対し甚しく信義を欠き、

道義上是認しえないものというべきである。

 

ところで、株式会社における株主総会決議不存在確認の訴は、

商法252条所定の株主総会決議無効確認の訴の一態様として適法であり、

これを認容する判決は対世効を有するものと解されるところ、

右商法252条の規定は有限会社法41条により

有限会社の社員総会に準用されているので、

右社員総会の決議の不存在確認を求める

被上告人の本訴請求を認容する判決も

対世効を有するものというべきである。

 

そうすると、前記のように被上告人の本訴の提起がI夫婦に対する

著しい信義違反の行為であること及び請求認容の判決が

第三者であるI夫婦に対してもその効力を有することに鑑み、

被上告人の本件訴提起は訴権の濫用にあたるものというべく、

右訴は不適法たるを免れない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

会社法判例をわかりやすく解説コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事