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【刑事訴訟法】被疑者に対する長時間の取調べが任意捜査として許容される限度を逸脱したものか (平成元年7月4日最高裁)

被疑者に対する長時間の取調べが任意捜査として許容される限度を逸脱したものか

(平成元年7月4日最高裁)

事件番号  昭和60(あ)826

 

この裁判では、

被疑者に対する長時間の取調べが任意捜査として

許容される限度を逸脱したものかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、事案の性質、

被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、

社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、

許容されるものである(最高裁昭和五七年(あ)

第301号同59年2月29日第二小法廷決定・

刑集38巻3号479頁参照)。

 

本件任意取調べは、被告人に一睡もさせずに徹夜で行われ、

更に被告人が一応の自白をした後も

ほぼ半日にわたり継続してなされたものであって、

一般的に、このような長時間にわたる被疑者に対する取調べは、

たとえ任意捜査としてなされるものであっても、

被疑者の心身に多大の苦痛、疲労を与えるものであるから、

特段の事情がない限り、容易にこれを是認できるものではなく、

ことに本件においては、被告人が被害者を

殺害したことを認める自白をした段階で

速やかに必要な裏付け捜査をしたうえ逮捕手続をとって

取調べを中断するなど他にとりうる方途もあったと

考えられるのであるから、

その適法性を肯認するには慎重を期さなければならない。

 

そして、もし本件取調べが被告人の供述の任意性に疑いを

生じさせるようなものであったときには、

その取調べを違法とし、その間になされた

自白の証拠能力を否定すべきものである。

 

そこで、本件任意取調べについて更に検討するのに、

次のような特殊な事情のあったことはこれを認めなければならない。

 

すなわち、前述のとおり、警察官は、

被害者の生前の生活状況等をよく知る参考人として

被告人から事情を聴取するため本件取調べを始めたものであり、

冒頭被告人から進んで取調べを願う旨の承諾を得ていた。

 

また、被告人が被害者を殺害した旨の自白を始めたのは、

翌朝午前九時半過ぎころであり、その後取調べが長時間に及んだのも、

警察官において、逮捕に必要な資料を得る意図のもとに

強盗の犯意について自白を強要するため取調べを続け、

あるいは逮捕の際の時間制限を免れる意図のもとに

任意取調べを装つて取調べを続けた結果ではなく、

それまでの捜査により既に逮捕に必要な資料はこれを得ていたものの、

殺人と窃盗に及んだ旨の被告人の自白が客観的状況と照応せず、

虚偽を含んでいると判断されたため、

真相は強盗殺人ではないかとの容疑を抱いて

取調べを続けた結果であると認められる。

 

さらに、本件の任意の取調べを通じて、

被告人が取調べを拒否して帰宅しようとしたり、

休息させてほしいと申し出た形跡はなく、

本件の任意の取調べ及びその後の取調べにおいて、

警察官の追及を受けながらなお前記郵便貯金の払戻時期など

重要な点につき虚偽の供述や弁解を続けるなどの態度を示しており、

所論がいうように当時被告人が風邪や眠気のため意識が

もうろうとしていたなどの状態にあったものとは認め難い。

 

以上の事情に加え、本件事案の性質、重大性を総合勘案すると、

本件取調べは、社会通念上任意捜査として

許容される限度を逸脱したものであつたとまでは断ずることができず、

その際になされた被告人の自白の任意性に疑いを

生じさせるようなものであつたとも認められない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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