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【刑法判例】川崎協同病院事件(治療行為の中止)の要点をわかりやすく解説

川崎協同病院事件(治療行為の中止)

(平成21年12月7日最高裁)

事件番号  平成19(あ)585

 

当時58歳の男性患者は、

気管支喘息重積発作で昏睡状態に陥り、

医師は「患者は9割9分9厘植物状態になり、

9割9分9厘脳死状態である」

と説明し、患者の家族は、

気道確保目的で挿入されていた患者の

気管内チューブ抜去に同意し、平穏な死を期待しました。

 

患者の妻子と孫が集まる病室で、

医師はチューブを抜去することで患者が

死亡することを認識のうえで、チューブを抜去したところ、

患者は予想に反して身体をのけぞらすなど苦悶様呼吸を始め、

医師は鎮静剤セルシンやドルミカムを静脈注射するも鎮められず、

同僚医師へ助言を求め、その示唆に基づき、

筋弛緩剤ミオブロックを集中治療室から取り寄せ、

3アンプルを看護師に静脈注射させ、

患者を窒息死に至らしめました。

 

一審横浜地裁判決は、治療中止について、

患者の自己決定権と治療義務の限界を根拠とした

許容要件を示唆するも、本件については、

家族の要請も、死期の切迫性も認められないとして、

抜管行為と筋弛緩剤投与の両者は、

殺人罪を構成するものとして、

被告を懲役3年執行猶予5年としました。

 

原審は抜管行為は家族の要請によるもので、

量刑不当として一審を破棄しました。

 

弁護人は、意思表示できない患者の自己決定権を否定した

一審が憲法違反であり、また治療中止の場面では、

死期の切迫性は不要であること等を主張して上告しました。

 

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最高裁判所の見解

被害者が気管支ぜん息の重積発作を起こして入院した後、

本件抜管時までに、同人の余命等を

判断するために必要とされる

脳波等の検査は実施されておらず、

発症からいまだ2週間の時点でもあり、

その回復可能性や余命について

的確な判断を下せる状況にはなかったものと認められる。

 

そして、被害者は、本件時、

こん睡状態にあったものであるところ、

本件気管内チューブの抜管は、

被害者の回復をあきらめた家族からの要請に基づき

行われたものであるが、

その要請は上記の状況から認められるとおり

被害者の病状等について適切な情報が

伝えられた上でされたものではなく、

上記抜管行為が被害者の

推定的意思に基づくということもできない。

 

以上によれば、上記抜管行為は、

法律上許容される治療中止には当たらないというべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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