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【刑法判例】通称の使用と私文書偽造 (昭和59年2月17日最高裁)の要点をわかりやすく解説

通称の使用と私文書偽造

(昭和59年2月17日最高裁)

事件番号  昭和58(あ)257

 

この裁判では、

本邦に密入国し、外国人の新規登録申請をしていないにもかかわらず、

甲名義で発行された外国人登録証明書を他から取得し、

その名義で登録事項確認申請を繰り返すことにより、

自らが外国人登録証明書の甲その人であるかのように装って

本邦に在留を続けていた被告人が、甲名義を用いて

再入国許可申請書を作成、行使した所為は、被告人において

甲という名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、

それが相当広範囲に被告人を指称するものとして

定着していた場合であっても、私文書偽造、同行使罪にあたるかどうかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

原判決が、私文書偽造とは、その作成名義を偽ること、

すなわち私文書の名義人でない者が権限がないのに、

名義人の氏名を冒用して文書を作成することをいうのであって、

その本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を

偽る点にあるとした点は正当であるが、

さらに進んで本件再入国許可申請書は、

その名義人と作成者である被告人との間に

客観的に人格の同一性が認められ、不真正文書でないことが明白であり、

被告人の本件所為は私文書偽造、同行使罪にあたらないとした判断は、

刑法159条1項、161条1項の解釈適用を誤ったものというべきである。

 

再入国許可申請書の性質について考えるのに、

出入国管理令26条が定める再入国の許可とは、

適法に本邦に在留する外国人がその在留期間内に

再入国する意図をもって出国しようとするときに、

その者の申請に基づき法務大臣が与えるものであるが、

右許可を申請しようとする者は、所定の様式による

再入国許可申請書を法務省又は入国管理事務所に出頭して、

法務大臣に提出しなければならず、その申請書には

申請人が署名すべきものとされ、さらに、

その申請書の提出にあたっては、旅券、外国人登録証明書などの

書類を呈示しなければならないとされている。

 

つまり、再入国許可申請書は、

右のような再入国の許可という

公の手続内において用いられる文書であり、

また、再入国の許可は、申請人が

適法に本邦に在留することを前提としているため、

その審査にあたっては、申請人の地位、資格を確認することが

必要、不可欠のこととされているのである。

 

したがって、再入国の許可を申請するにあたっては、

ことがらの性質上、当然に、本名を用いて申請書を

作成することが要求されているといわなければならない。

 

ところで、原判決が認定した前掲事実によれば、

被告人は、密入国者であって外国人の

新規登録申請をしていないのにかかわらず、

A名義で発行された外国人登録証明書を取得し、

その名義で登録事項確認申請を繰り返すことにより、

自らが右登録証明書の金哲秀その人であるかのように装って

本邦に在留を続けていたというべきであり、したがって、

被告人がAという名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、

それが相当広範囲に被告人を指称する名称として定着し、

原判決のいう他人との混同を生ずるおそれのない

高度の特定識別機能を有するに至ったとしても、

右のように被告人が外国人登録の関係では

Aになりすましていた事実を否定することはできない。

 

以上の事実関係を背景に、被告人は、原認定のとおり、

再入国の許可を取得しようとして、

本件再入国許可申請書をA名義で作成、行使したというのであるが、

前述した再入国許可申請書の性質にも照らすと、

本件文書に表示されたAの氏名から認識される人格は、

適法に本邦に在留することを許されているAであって、

密入国をし、なんらの在留資格をも有しない被告人とは

別の人格であることが明らかであるから、

そこに本件文書の名義人と作成者との

人格の同一性に齟齬を生じているというべきである。

 

したがって、被告人は、本件再入国許可申請書の作成名義を偽り、

他人の名義でこれを作成、行使したものでありその所為は

私文書偽造、同行使罪にあたると解するのが相当である

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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