電磁的公正証書原本不実記録罪

(平成28年12月5日最高裁)

事件番号  平成26(あ)1197

 

この裁判は、

土地につき所有権移転登記等の申請をして

当該登記等をさせた行為が

電磁的公正証書原本不実記録罪に

該当しないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪の保護法益は,

公正証書の原本として用いられる電磁的記録に対する

公共的信用であると解されるところ,

不動産に係る物権変動を公示することにより

不動産取引の安全と円滑に資するという

不動産登記制度の目的を踏まえると,

上記各罪の成否に関し,不動産の権利に関する登記の申請が

虚偽の申立てに当たるか否か,また,

当該登記が不実の記録に当たるか否かについては,

登記実務上許容されている例外的な場合を除き,

当該登記が当該不動産に係る民事実体法上の

物権変動の過程を忠実に反映しているか否かという

観点から判断すべきものである。

 

そうすると,本件各登記の申請が虚偽の申立てに当たるか否か,また,

本件各登記が不実の記録に当たるか否かを検討するにあたっては,

本件各土地の所有権が本件売主らから,Bに直接移転したのか,

それともA社に一旦移転したのかが問題となる。

 

原判決は,本件は,Bの存在を秘匿して,

買受名義人を偽装した名義貸しであるとし,

その実態を踏まえて,本件各土地の所有権が

A社の名を借りたBに

直接移転したものと認めるべきであるとした。

 

しかし,本件事実関係によれば,

本件各売買契約における買主の名義はいずれもA社であり,

被告人がA社の代表者として,本件売主らの面前で,

売買契約書等を作成し,代金全額を支払っている。

 

また,被告人がBのために本件各売買契約を

締結する旨の顕名は一切なく,本件売主らは

A社が買主であると認識していた。

 

そうすると,本件各売買契約の当事者は,

本件売主らとA社であり,本件各売買契約により

本件各土地の所有権は,本件売主らからA社に

移転したものと認めるのが相当である。

 

原判決は,被告人とBとの間の合意の存在を重視するが,

本件各売買契約における本件売主らの認識等を踏まえれば,

上記合意の存在によって上記の認定が左右されるものではない。

 

また,本件事実関係の下では,民法が採用する

顕名主義の例外を認めるなどの構成によって

本件各土地の所有権がBへ直接移転したということもできない。

 

以上によれば,本件各土地の所有権が本件各売買を

原因としてA社に移転したことなどを内容とする本件各登記は,

当該不動産に係る民事実体法上の物権変動の過程を

忠実に反映したものであるから,これに係る申請が

虚偽の申立てであるとはいえず,また,

当該登記が不実の記録であるともいえない。

 

したがって,本件各土地の所有権が本件売主らから

Bに直接移転した旨の認定を前提に,

本件各登記の申請を虚偽の申立てであるとし,また,

本件各登記が不実の記録に当たるとして第1審判決を破棄し,

本件公訴事実第1及び第2について被告人を有罪とした原判決には,

事実を誤認して法令の解釈適用を誤った違法があり,

この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって,

原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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