刑訴法295条1項

(平成27年5月25日最高裁)

事件番号  平成25(あ)1465

 

この裁判は、

 公判前整理手続で明示された主張に関し

その内容を更に具体化する被告人質問等を

刑訴法295条1項により制限することはできないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

公判前整理手続は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ

迅速に行うため,事件の争点及び証拠を整理する手続であり,

訴訟関係人は,その実施に関して協力する義務を負う上,

被告人又は弁護人は,刑訴法316条の17第1項所定の

主張明示義務を負うのであるから,公判期日においてすることを

予定している主張があるにもかかわらず,

これを明示しないということは許されない。

 

こうしてみると,公判前整理手続終了後の

新たな主張を制限する規定はなく,

公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を

当然に制限できるとは解し得ないものの,

公判前整理手続における被告人又は弁護人の

予定主張の明示状況(裁判所の求釈明に対する釈明の状況を含む。),

新たな主張がされるに至った経緯,新たな主張の内容等の

諸般の事情を総合的に考慮し,

前記主張明示義務に違反したものと認められ,かつ,

公判前整理手続で明示されなかった主張に関して

被告人の供述を求める行為(質問)やこれに応じた

被告人の供述を許すことが,公判前整理手続を行った意味を

失わせるものと認められる場合(例えば,公判前整理手続において,

裁判所の求釈明にもかかわらず,

「アリバイの主張をする予定である。具体的内容は被告人質問に

おいて明らかにする。」という限度でしか

主張を明示しなかったような場合)には,

新たな主張に係る事項の重要性等も踏まえた上で,

公判期日でその具体的内容に関する質問や被告人の供述が,

刑訴法295条1項により制限されることがあり得るというべきである。

 

本件質問等は,被告人が公判前整理手続において明示していた

「本件公訴事実記載の日時において,

大阪市西成区内の自宅ないしその付近にいた。」

旨のアリバイの主張に関し,

具体的な供述を求め,これに対する被告人の供述が

されようとしたものにすぎないところ,

本件質問等が刑訴法295条1項所定の

「事件に関係のない事項にわたる」

ものでないことは明らかである。

 

また,前記1(2)のような公判前整理手続の経過及び結果,並びに,

被告人が公判期日で供述しようとした内容に照らすと,

前記主張明示義務に違反したものとも,

本件質問等を許すことが公判前整理手続を行った意味を

失わせるものとも認められず,

本件質問等を同条項により制限することはできない。

 

そうすると,検察官の異議申立てを容れて本件質問等を制限した

第1審裁判所の措置は是認できず,

原判決が同措置は同条項に

反するとまではいえない旨判示した点は,

同条項の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。

 

もっとも,原判決は,

本件質問等を制限した措置が違法であったとしても,

被告人が,最終陳述において,前記アリバイの

主張の具体的な内容を陳述しており,

この陳述は制限されなかったことなどを指摘し,

前記法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼすものではない旨判示しており,

その結論は相当であるから,原判決に,

判決に影響を及ぼすべき違法があるとはいえない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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