山陽電気軌道事件(争議行為中の使用者の操業継続の自由)

(昭和53年11月15日最高裁)

事件番号  昭和52(あ)583

 

この裁判では、ストライキ中、

操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対して、

使用者は操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができるか、

ストライキに際して、会社の営業用バスを組合の支配下に置いた

車両確保行為が威力業務妨害罪に当たるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

使用者は、労働者測がストライキを行っている期間中であっても、

操業を継続することができる。

 

使用者は、労働者側の正当な争議行為によって

業務の正常な運営が阻害されることは受忍しなければならないが、

ストライキ中であっても業務の遂行自体を

停止しなければならないものではなく、

操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対しては

操業を継続するために必要とする対抗措置を

とることができると解すべきであり、

このように解しても所論の指摘するいわゆる

労使対等の原則に違背するものではない。

 

従って、使用者が操業を継続するために必要とする業務は、

それが労働者側の争議手段に対する対抗措置として

行われたものであるからといって、

威力業務妨害罪によって保護されるべき業務としての

性格を失うものではないというべきである。

 

会社のした右車両分散等の行為は、

ストライキの期間中もこれに参加しないE労所属の従業員によって

操業を継続しようとした会社が、操業を阻止する手段として

支部組合の計画していた車両の確保を未然に防いで

本来の運送事業を継続するために必要とした業務であって、

これを威力業務妨害罪によって保護されるべき業務とみることに

何の支障もないというべきである。

以上と同趣旨の原判断は相当として是認できる。

 

ストライキに際し、使用者の継続しようとする操業を

阻止するために行われた行為が

犯罪構成要件に該当する場合において、

その刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、

当該行為の動機目的、態様、周囲の客観的状況

その他諸般の事情を考慮に入れ、

それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを

判定しなければならない

 

これを本件についてみると、

原判決の認定及び第一審判決の認定中原判決の是認する部分によれば、

被告人らによつて現に行われた本件の車両確保行為は、

いずれも相手方の納得を前提とすることなく一方的に、

会社が回送中又は路上に駐車中のバスを奪って

支部組合側の支配下に置き(原判示第二章第二及び第四の事実)あるいは

会社が取引先の整備工場又は系列下の

自動車学校に預託中のバスを搬出しようとして

看守者の意思に反して建造物に

侵入したもの(同第一及び第五の事実)であって、

旅客運送業を営む会社にとり

最も重要な生産手段に対する会社の支配管理権を侵害し又は

侵害しようとしたものであるばかりでなく、それらの行為は、

多数人による暴力を伴う威力を用い(原判示第二章第二及び第四の事実)あるいは

多数の威力を示して(同第一及び第五の事実)行われている。

 

右のほか前記認定に現われているその余の具体的状況、

本件争議においては、会社側の強い関与を背景に誕生し

支部組合に比較するときわめて会社寄りのE労が存在し、

このE労が会社従業員の3分の2近くを擁して会社の操業継続に協力したこと、

これらE労の存在及び行動が労使間にかなりの力の不均衡を生ぜしめ

支部組合側の争議権行使の実効を著しく減殺するものであったこと、

しかし、これらの事実は、一面においては、支部組合として

争議突入の当然の前提として受容すべき事柄の一つであったことなど、

前記認定に現われている諸般の事情及び所論の指摘する

交通産業における特殊性をすべて考慮に入れ、

法秩序全体の見地から考察するとき、

本件車両確保行為は到底許容されるべきものとは認められない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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