日本メールオーダー事件

(昭和61年1月24日最高裁)

事件番号  昭和50(行ツ)77

 

この裁判では、併存する労働組合の双方に、

生産性向上という条件を提示し、これを受け入れない場合に

年末一時金を支給しないとし、

条件を受け入れた労働組合に年末一時金を支給し

条件を受け入れなかったもう一方の労働組合には

年末一時金を支給しなかった件について、

不当労働行為となるかについて裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件前提条件が提示されるに至った経緯、

状況及び右前提条件の内容等に関して上述したところを総合すると、

分会において本件前提条件の受諾を拒絶して

団体交渉を決裂させるのやむなきに至り、

その結果、分会所属の組合員が

一時金の支給を受けることができなくなったことについては、

被上告人において、前記のように合理性を肯認しえず、

したがって分会の受け入れることのできないような前提条件を、

分会が受諾しないであろうことを予測しえたにもかかわらずあえて提案し、

これに固執したことに原因があるといわなければならず、しかも、

分会の右前提条件受諾拒否の態度は、

理由のないものではないというべきである。

 

そして、一方において、

労組が本件前提条件を受諾して団体交渉を妥結させ、

一時金につき労働協約を成立させたのに、他方において、

分会は、本件前提条件の受諾を拒絶して団体交渉を決裂させ、

一時金につき労働協約を成立させることができないこととなれば、

右二つの労働組合所属の組合員の間に一時金の支給につき差異が生ずることは

当然の成り行きというべきであり、

しかも、分会が少数派組合であることからすると、

分会所属の組合員が一時金の支給を受けられないことになれば、

同組合員らの間に動揺を来たし、

そのことが分会の組織力に少なからぬ影響を及ぼし、

ひいてはその弱体化を来たすであろうことは、

容易に予測しうることであつたということができる。

 

したがって、被上告人が右のような状況の下において

本件前提条件にあえて固執したということは、

かかる状況を利して分会及びその所属組合員をして

右のような結果を甘受するのやむなきに至らしめようとの意図を

有していたとの評価を受けてもやむをえないものといわなければならない。

 

そうすると、被上告人の右行為は、これを全体としてみた場合には、

分会に所属している組合員を、そのことの故に差別し、

これによって分会の内部に動揺を生じさせ、

ひいて分会の組織を弱体化させようとの意図の下に行われたものとして、

労働組合法7条1号及び3号の不当労働行為を

構成するものというべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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