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【労働法判例】東亜ペイント事件(昭和61年7月14日最高裁)の要点をわかりやすく解説

東亜ペイント事件

(昭和61年7月14日最高裁)

事件番号  昭和59(オ)1318

 

大阪に本店及び事務所を、

東京に支店を、大阪外2か所に工場を、

全国13か所に営業所を置き、従業員約800名を擁して、

塗料及び化成品の製造・販売を行っているY社に

神戸営業所で主任待遇として勤務していたXは、

広島営業所への転勤を命じられましたが、家庭の事情から、

転居を伴う転勤には応じられないとし、

Y社は名古屋営業所へ転勤するよう命じましたが、

これにも応じなかったため、Xは懲戒解雇とされました。

 

Xは転勤命令の無効、懲戒解雇の無効を主張し、

労働契約上の地位確認を求めて訴えを提起しました。

 

Xの当時の状況

Xは、入社当初から営業を担当しており、

業務上の必要に基づき

将来転勤のあることが当然に予定されていました。

 

本件転勤命令が発令された当時、

母親(71歳)、妻(28歳)及び長女(2歳)と共に

堺市内の母親名義の家屋に居住し、母親を扶養していました。


母親は、元気で、食事の用意や買物もできましたが、

生まれてから大阪を離れたことがなく、

長年続けて来た俳句を趣味とし、

老人仲間で月2、3回句会を開いていました。


妻は、昭和48年8月30日にI紡績株式会社を退職し、

同年9月1日から無認可の保育所に保母として勤め始めるとともに、

右保育所の運営委員となりました。

 

右保育所は、当時、

保母3名、パートタイマー2名の陣容で発足したばかりで、

全員が正式な保母の資格は有しておらず、

妻も保母資格取得のための勉強をしていました。

 

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最高裁判所の見解

Y社の労働協約及び就業規則には、Y社は業務上の都合により

従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、

現に上告会社では、全国に10数か所の営業所等を置き、

その間において従業員、特に営業担当者の転勤を頻繁に行っており、

被上告人は大学卒業資格の営業担当者として上告会社に入社したもので、

両者の間で労働契約が成立した際にも

勤務地を大阪に限定する旨の合意は

なされなかったという前記事情の下においては、

上告会社は個別的同意なしに被上告人の勤務場所を決定し、

これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を

有するものというべきである。

 

使用者は業務上の必要に応じ、

その裁量により労働者の勤務場所を

決定することができるものというべきであるが、転勤、

特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に

少なからぬ影響を与えずにはおかないから、

使用者の転勤令権は無制約に行使することができるものではなく、

これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、

当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は

業務上の必要性が存する場合であっても、

当該転勤命令が他の不当な動機・目的を

もってなされたものであるとき

若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を

著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、

特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は

権利の濫用になるものではないというべきである。

 

右の業務上の必要性についても、

当該転勤先への異動が余人をもっては

容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、

労働力の適正配置、業務の能率増進、

労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、

業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、

業務上の必要性の存在を肯定すべきである。


本件についてこれをみるに、

名古屋営業所のG主任の後任者として適当な者を

名古屋営業所へ転勤させる必要があったのであるから、

主任待遇で営業に従事していたXを選び名古屋営業所勤務を命じた

本件転勤命令には業務上の必要性が

優に存したものということができる。

 

そして、前記のXの家族状況に照らすと、

名古屋営業所への転勤がXに与える家庭生活上の不利益は、

転勤に伴い通常甘受すべき程度のものというべきである。

 

したがって、原審の認定した前記事実関係の下においては、

本件転勤命令は権利の濫用に当たらないと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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