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【労働法判例】片山組事件(労務の不提供と賃金請求権)の要点をわかりやすく解説

片山組事件(労務の不提供と賃金請求権)

(平成10年4月9日最高裁)事件番号  平成7(オ)1230

 

原告Xは昭和45年3月、

土木建築施工、請負等を行うY社に雇用され、

建設工事現場における現場監督業務に従事していました。

 

平成2年夏、Xは、バセドウ病にり患している旨の診断を受け、

Y社に申告しないまま、以後通院治療を受けながら、

平成3年2月まで現場監督業務を続けました。

 

その後、次の現場監督業務が生ずるまでの間、

臨時的、一時的業務として、

Y社の工務管理部において図面の作成など

事務作業に従事していました。

 

そしてXは、Y社から

平成3年8月から現場監督業務に従事すべき旨の

業務命令を受けましたが、

病気のため現場作業に従事できないこと、

残業は1時間に限り可能なこと、

日曜日・休日の勤務は不可能であることなどを申し出、

Y社の要請に応じて診断書を提出しました。

 

Y社は提出された主治医の診断書と

Xの病状説明・要望書をもとに、

産業医に相談するまでもなく

自宅治療が妥当であるとの結論に達し、

Y社は平成3年9月30日付の指示書で、

Xに対し10月1日から当分の間自宅で

病気治療すべき旨の命令を発しました。

 

これに対してXは、

事務作業を行うことはできるとして

主治医の診断書を提出しましたが、

現場監督業務に従事しうる旨の記載がないことから、

Y社は自宅治療命令を持続しました。

 

その後、Xが平成4年2月5日に

現場監督業務に復帰するまでの期間中、

Xは就労の意思を表明するために工事現場に赴くものの、

Y社はXの就労を拒否し、

本件自宅治療期間中欠勤扱いとして

月例賃金を支給せず、冬季一時金を減額支給しました。

 

そこで、Xは欠勤扱い期間中の賃金と

12月賞与の減額分をYに請求して提訴しました。

 

一審は、Xの請求を認容し、原審はXの請求を退けたので、

Xが上告しました。

 

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最高裁判所の見解

「労働者が職種や業務内容を特定せずに

労働契約を締結した場合においては、

現に就業を命じられた特定の業務について

労務の提供が十全にはできないとしても、

その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、

当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして

当該労働者が配置される

現実的可能性があると認められる他の業務について

労務の提供をすることができ、かつ、

その提供を申し出ているならば、

なお債務の本旨に従った

履行の提供があると解するのが相当である。


そのように解さないと、

同一の企業における同様の労働契約を締結した

労働者の提供し得る労務の範囲に

同様の身体的原因による制約が生じた場合に、

その能力、経験、地位等にかかわりなく、

現に就業を命じられている業務によって、

労務の提供が債務の本旨に従ったものになるか否か、

また、その結果、賃金請求権を取得するか否かが

左右されることになり、不合理である。

 

Xは、Y社に雇用されて以来21年以上にわたり

建築工事現場における

現場監督業務に従事してきたものであるが、

労働契約上その職種や業務内容が

現場監督業務に限定されていたとは

認定されておらず、また、

上告人提出の病状説明書の記載に誇張がみられるとしても、

本件自宅治療命令を受けた当時、

事務作業に係る労務の提供は可能であり、かつ、

その提供を申し出ていたというべきである。

 

そうすると、右事実から直ちにXが

債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと

断定することはできず、上告人の能力、経験、地位、

被上告人の規模、業種、被上告人における

労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして

上告人が配置される現実的可能性があると認められる業務が

他にあったかどうかを検討すべきである。

 

そして、XはY社において

現場監督業務に従事していた労働者が

病気、けがなどにより

当該業務に従事することができなくなったときに

他の部署に配置転換された例があると主張しているが、

その点についての認定判断はされていない。

 

そうすると、これらの点について審理判断をしないまま、

上告人の労務の提供が債務の本旨に従ったものではないとした

原審の前記判断は、XとY社の労働契約の解釈を誤った

違法があるものといわなければならない。」

として、破棄差戻としました。

 

なお、差戻審判決では、

Xに遂行可能な事務作業があり

これに配置する現実的可能性があったとして、

賃金請求権を認められました。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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