関西電力事件(ビラ配布に対する譴責処分)

(昭和58年9月8日最高裁)事件番号  昭和53(オ)1144

 

Y社に雇用されているXは、従業員社宅において

会社を誹謗中傷するビラ約350枚を配布し、

Y社の就業規則に定める懲戒事由の一つである

「その他特に不都合な行為があつたとき」

にあたるものとして、

Y社がXに対して就業規則に定める6種の懲戒のうち

最も軽い懲戒である譴責処分を課しました。

 

Xはこの処分の無効確認の訴えを提起しました。

一審はXの請求を認容し、原審は棄却し、

Xが上告しました。

 

最高裁判所の見解

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、

使用者に対して労務提供義務を負うとともに、

企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、

もって企業の円滑な運営を図るために、

その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、

当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を

課することができるものである。

 

企業秩序は、通常、労働者の職場内又は

職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるのであるが、

職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、

企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど

企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、

使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、

これを理由として労働者に懲戒を課することも許される。

 

ビラの内容が大部分事実に基づかず、又は事実を誇張歪曲して

Y社を非難攻撃し、全体としてこれを中傷誹謗するものであり、

ビラの配布により労働者の会社に対する

不信感を醸成して企業秩序を乱し、

又はそのおそれがあつたものとした原審の認定判断は、

原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができないではなく、

その過程に所論の違法があるものとすることはできない。

 

Xによる本件ビラの配布は、就業時間外に職場外である

Y社の従業員社宅において職務遂行に関係なく行われたものではあるが、

前記就業規則所定の懲戒事由にあたると解することができ、

これを理由として上告人に対して懲戒として

譴責を課したことは懲戒権者に認められる裁量権の範囲を

超えるものとは認められないというべきであり、

これと同旨の原審の判断は正当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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