法令公布の時期

(昭和33年10月15日最高裁)

事件番号  昭和30(あ)871

 

昭和29年法律第177号覚せい剤取締役法の

一部を改正する法律は、

附則で「この法律は、公布の日より施行する」

とされ、同年6月12日に官報で公布されました。

 

Xは、同日午前9時に、この法律に違反する行為をし、

罪に問われましたが、Xの住む市内では

官報を閲覧・購入できるのは翌13日以降であったため、

本改正の公布があったといえるかどうかが問題となりました。

(Xの当該行為が公布よりも先だった場合は、

処罰の対象とならないことになります。)

 

最高裁判所の見解

成文の法令が一般的に国民に対し、

現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、

その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることを

前提要件とするものであること、またわが国においては、

明治初年以来、法令の内容を

一般国民の知りうべき状態に置く方法として

法令公布の制度を採用し、これを法令施行の前提要件とし、

そしてその公布の方法は、

多年官報によることに定められて来たが、

公式令廃止後も、原則としては官報によってなされるものと解するを

相当とすることは、当裁判所の判例とする。

 

官報による法令の公布は、一連の手続、

順序を経てなされるものであるが、

本件法律を改正した法律を掲載した昭和29年6月12日付官報は、

同日午前5時50分、第一便自動車が東京駅(関東、東海、近畿方面)、

新宿駅(山梨方面)の順序で一台、上野駅(北海道、東北、北関東北陸方面)、

両国駅(千葉方面)の順序で一台、同時に印刷局から発送され、

そして最終便は同日午前7時50分、東京駅(中国、四国、九州方面)、

東京官報販売所の順序に積下すため、印刷局から発送された。

 

右官報が全国の各官報販売所に

到達する時点、販売所から直接に又は

取次店を経て間接に購読予約者に配送される時点及び

官報販売所又は印刷局官報課で、一般の希望者に官報を閲覧せしめ又は

一部売する時点はそれぞれ異っていたが、当時一般の希望者が右官報を閲覧し又は

購入しようとすればそれをなし得た最初の場所は、

印刷局官報課又は東京都官報販売所であり、その最初の時点は、

右二ケ所とも同日午前8時30分であったことが明らかである。

 

とすると、本件改正法律は、おそくとも、

同日午前八時三〇分までには、前記大法廷判決にいわゆる

「一般国民の知り得べき状態に置かれ」たもの、

すなわち公布されたものと解すべきである。

 

そして「この法律は、公布の日より施行する」

との附則の置かれた本件改正法律は、右公布と同時に施行されるに

至ったものと解さなければならない。

 

本件犯行は、

同日午前9時頃になされたものであるというのであるから、

本件改正法律が公布せられ、

施行せられるに至った後の犯行であることは明瞭であって、

これに本件改正法律が適用せられることは

当然のことといわねばならない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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