立川反戦ビラ配布事件

(平成20年4月11日最高裁判所)

事件番号  平成17(あ)2652

 

防衛庁の職員及びその家族が居住するために国が

設置した立川駐屯地関係管理機関の管理の下にある宿舎に、

共同住宅一階出入り口付近には、

「宿舎地域内の禁止事項」として、

「関係者以外、地域内に立ち入ること」

「ビラ貼り・配り等の宣伝活動」等と記載した貼札を

官舎の出入り口付近へ掲示されていましたが、

Xらは、反戦活動の一環として

「自衛官・ご家族の皆さんへ 自衛隊のイラク派兵反対!

いっしょに考え、反対の声をあげよう!」

と書かれた反戦ビラを自衛隊東立川駐屯地の

官舎戸別郵便受け(新聞受け)に投函し、

これが刑法130条前段の罪に問われました。

 

このビラを配布した行為について、

刑法130条前段の罪に問われることが

憲法21条1項に違反しないかという点が注目されました。

 

裁判所は、

「表現の自由は,民主主義社会において

特に重要な権利として尊重されなければならず、

被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は、

表現の自由の行使ということができる

 

しかしながら、憲法21条1項も、

表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、

公共の福祉のため必要かつ

合理的な制限を是認するものであって、

たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、

その手段が他人の権利を不当に害するようなものは

許されないというべきである。

 

本件では,表現そのものを処罰することの

憲法適合性が問われているのではなく、

表現の手段すなわちビラの配布のために

「人の看守する邸宅」に管理権者の承諾なく

立ち入ったことを処罰することの

憲法適合性が問われているところ、

本件で被告人らが立ち入った場所は、

防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である

集合住宅の共用部分及びその敷地であり、

自衛隊・防衛庁当局がそのような

場所として管理していたもので、

一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。

 

たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、

このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、

管理権者の管理権を侵害するのみならず、

そこで私的生活を営む者の

私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。

 

したがって、本件被告人らの行為をもって

刑法130条前段の罪に問うことは、

憲法21条1項に違反するものではない。」

としました。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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