当事者の一定の主張を排斥するために当事者から主張されない他の事実を認定することと弁論主義

(昭和46年6月29日最高裁)

事件番号  昭和46(オ)286

 

この裁判では、

当事者の一定の主張を排斥するために当事者から

主張されない他の事実を認定することと弁論主義について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

原告の請求をその主張した請求原因事実に基づかず、

主張しない事実関係に基づいて認容し、または、

被告の抗弁をその主張にかかる事実以外の事実に基づいて

採用し原告の請求を排斥することは、所論弁論主義に違反するもので、

許されないところであるが、被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、

または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、

事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を

証拠上肯認することができない事情として、

右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、

もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、

その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも

弁論主義に違反するものではない

 

けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのは

もっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または

抗弁事実の立証ができなかつたためであって、

別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。

 

本件についてこれをみるに、上告人において、

訴外Dの被上告人に対する弁済を主張するについては、

訴外Dにおいて債務の履行に適合する給付をしたことのほか、

右給付が本件手形金債権によつて担保された原判示の

原因債権に対応する債務の履行としてなされたものであることの

二つの点を立証する責務を負うものであるところ、

原判決は、その措辞に正鵠を欠く点はあるが、要するに、

Dが被上告人に支払つた原判示の金員は、

Dにおいて別に被上告人に対して負担していた50万円の

借入金債務の内入れ弁済として

支払ったものであることを認定することにより、

上告人の抗弁は、後者の点についての立証を欠くものとして

これを排斥したものと認められる。してみれば、

原判決にはなんら弁論主義違背のかどはないものというべきである。

 

また、原判決は、Dの支払にかかる金員は別口の債務に

全額充当されることを確定したのであるから、

原審が所論法定充当の規定の適用を

考慮する余地はなかったものであり、

この点においても原判決に所論の違法はない。

 

なお、口頭弁論を再開しなかった原審の措置を違法として

非難する所論は、裁判所の裁量に属する行為について

不服を述べるものにすぎず、また、Dが前記金員の支払に際し、

これを本件手形金の支払に充当すべき旨指定をしたとして、

原審の事実認定を非難する所論は、記録によるも

右指定をなした事実が原審で主張された事実は認められないから、

その前提を欠くことに帰する。したがって、論旨は、

いずれも採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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