公の営造物の設置費用の負担者の責任

(昭和50年11月28日最高裁)

事件番号  昭和48(オ)896

 

この裁判では、

公の営造物の設置費用の負担者の責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

公の営造物の設置又は管理に瑕疵があるため国又は

公共団体が国家賠償法2条1項の規定によって

責任を負う場合につき、

同法3条1項が、同法2条1項と相まって、

当該営造物の設置もしくは管理にあたる者と

その設置もしくは管理の費用の負担者とが異なるときは、

その双方が損害賠償の責に任ずべきであるとしているのは、

もしそのいずれかのみが損害賠償の責任を負うとしたとすれば、

被害者たる国民が、そのいずれに賠償責任を求めるべきであるかを

必らずしも明確にしえないため、賠償の責に任ずべき者の選択に

困難をきたすことがありうるので、対外的には右双方に

損害賠償の責任を負わせることによって

右のような困難を除去しようとすることにあるのみでなく、

危険責任の法理に基づく同法2条の責任につき、

同一の法理に立って、被害者の救済を

全からしめようとするためでもあるから、

同法3条1項所定の設置費用の負担者には、

当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者のほか、

この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、

実質的にはこの者と当該営造物による事業を共同して

執行していると認められる者であって、

当該営造物の瑕疵による危険を

効果的に防止しうる者も含まれると解すべきであり、

したがって、公の営造物の設置者に対して

その費用を単に贈与したに過ぎない者は

同項所定の設置費用の負担者に含まれるものではないが、

法律の規定上当該営造物の設置をなしうることが認められている国が、

自らこれを設置するにかえて、特定の地方公共団体に対し

その設置を認めたうえ、右営造物の設置費用につき

当該地方公共団体の負担額と同等もしくは

これに近い経済的な補助を供与する反面、

右地方公共団体に対し法律上当該営造物につき

危険防止の措置を請求しうる立場にあるときには、

国は、同項所定の設置費用の負担者に

含まれるものというべきであり、

右の補助が地方財政法16条所定の補助金の交付に

該当するものであることは、直ちに右の理を

左右するものではないと解すべきである。

 

ところで、自然公園法25条によれば、

地方公共団体が国立公園事業を執行する場合、

その執行費用は、この地方公共団体が

負担すべきものとされているが、

同法14条1項及び2項によれば、

上告人が国立公園事業を執行すべきものとされ、

地方公共団体は、上告人から承認を受けて

その一部の執行をなしうるに止まり、また、

同法26条によれば、国が地方公共団体に対し

執行費用の一部を補助することができる旨

定められているのである。

 

そして、この補助金交付の趣旨・目的は、上告人が、

執行すべきものとされている国立公園事業につき、

一般的に地方公共団体に対しその一部の執行を勧奨し、

自然公園法の見地から助成の目的たりうると認められる

国立公園事業の一部につき、その執行を予定し又は

執行している地方公共団体と補助金交付契約を締結し、

これを通じて右地方公共団体に対し、その執行を義務づけ、かつ、

その執行が国立公園事業としての一定水準に

適合すべきものであることの義務を課するとともに、

当該事業の実施によって地方公共団体が被る

財政的な負担の軽減をはかることにあるのであり、

右の国立公園事業としての一定の水準には、

国立公園事業が国民の利用する道路、

施設等に関するものであるときには、

その利用者の事故防止に資するに足るものであることが

含まれるべきであることは明らかである。

 

そして、原審が適法に確定したところによれば、

上告人は、同法14条2項により三重県に対し、

国立公園に関する公園事業の一部の執行として

本件かけ橋を含む本件周回路の設置を承認し、

その際設置費用の半額に相当する補助金を交付し、

その後の改修にも度々相当の補助金の交付を続け、

上告人の本件周回路に関する設置費用の負担の割合は

2分の1近くにも達しているというのであるから、

上告人は、国家賠償法3条1項の適用に関しては、

本件周回路の設置費用の負担者というべきである。

 

したがって、これと同趣旨の原審の判断は、

正当として是認することができる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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