公文書の本人自身による公開請求

(平成13年12月18日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)21

 

この裁判では、

公文書の本人自身による公開請求について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

情報公開制度が先に採用され,いまだ個人情報保護制度が

採用されていない段階においては,

被上告人らが同県の実施機関に対し

公文書の開示を求める方法は,

情報公開制度において認められている

請求を行う方法に限られている。

 

また,情報公開制度と個人情報保護制度は,

前記のように異なる目的を有する別個の制度ではあるが,

互いに相いれない性質のものではなく,むしろ,

相互に補完し合って公の情報の開示を

実現するための制度ということができるのである。

 

とりわけ,本件において問題とされる個人に関する情報が

情報公開制度において非公開とすべき情報とされるのは,

個人情報保護制度が保護の対象とする個人の権利利益と

同一の権利利益を保護するためであると解されるのであり,

この点において,両者はいわば表裏の関係にあるということができ,

本件のような情報公開制度は,限定列挙された非公開情報に

該当する場合にのみ例外的に

公開請求を拒否することが許されるものである。

 

これらのことにかんがみれば,

個人情報保護制度が採用されていない状況の下において,

情報公開制度に基づいてされた

自己の個人情報の開示請求については,

そのような請求を許さない趣旨の規定が置かれている場合等は

格別,当該個人の上記権利利益を害さないことが

請求自体において明らかなときは,

個人に関する情報であることを理由に請求を拒否することは

できないと解するのが,条例の合理的な解釈というべきである。

 

もっとも,当該地方公共団体において

個人情報保護制度を採用した場合に

個人情報の開示を認めるべき要件をどのように

定めるかが決定されていない時点において,

同制度の下において採用される可能性のある種々の配慮をしないままに

情報公開制度に基づいて本人への個人情報の開示を認めることには,

予期しない不都合な事態を生ずるおそれがないとはいえないが,

他の非公開事由の定めの合理的な解釈適用により

解決が図られる問題であると考えられる。

 

このような観点から,本件処分の適否を検討する。

本件処分は,本件文書が

個人の健康状態等心身の状況に関する情報であって

本件条例8条1号に該当するとしてされたものであるところ,

当該個人というのが公開請求をした被上告人B1であることは,

本件公開請求それ自体において明らかであったものと考えられる。

 

そして,同号が,特定の個人が識別され得る情報のうち,

通常他人に知られたくないと認められるものを

公開しないことができると規定しているのは,

当該個人の権利利益を保護するためであることが明らかである。

 

また,本件条例には自己の個人情報の開示を

請求することを許さない趣旨の規定等は存しない。

 

そうすると,当該個人が自ら公開請求をしている場合には,

当該個人及びこれと共同で請求をしている

その配偶者に請求に係る公文書が開示されても,

当該個人の権利利益が害されるおそれはなく,

当該請求に限っては同号により非公開とすべき

理由がないものということができる。

 

これらによれば,個人情報保護制度が

採用されていない状況においては,

本件公開請求については

同号に該当しないものとして許否を決すべきであり,

同号に該当することを理由に本件文書を

公開しないものとすることはできないと解さざるを得ない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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