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【行政判例】森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」と保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格 (昭和57年9月9日最高裁)

森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」と保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格

(昭和57年9月9日最高裁)

事件番号  昭和52(行ツ)56

 

この裁判では、

森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」と

保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

一般に法律が対立する利益の調整として

一方の利益のために他方の利益に制約を課する場合において、

それが個々の利益主体間の利害の調整を図るというよりもむしろ、

一方の利益が現在及び将来における不特定多数者の顕在的又は

潜在的な利益の全体を包含するものであることに鑑み、

これを個別的利益を超えた抽象的・一般的な公益としてとらえ、

かかる公益保護の見地からこれと対立する他方の利益に

制限を課したものとみられるときには、通常、

当該公益に包含される不特定多数者の

個々人に帰属する具体的利益は、

直接的には右法律の保護する個別的利益としての地位を有せず、

いわば右の一般的公益の保護を通じて附随的、

反射的に保護される利益たる地位を

有するにすぎないとされているものと解されるから、

そうである限りは、かかる公益保護のための

私権制限に関する措置についての行政庁の処分が

法律の規定に違反し、法の保護する公益を

違法に侵害するものであっても、

そこに包含される不特定多数者の個別的利益の侵害は

単なる法の反射的利益の侵害にとどまり、

かかる侵害を受けたにすぎない者は、

右処分の取消しを求めるについて行政事件訴訟法9条に定める

法律上の利益を有する者には該当しないものと解すべきである。

 

しかしながら、他方、法律が、

これらの利益を専ら右のような

一般的公益の中に吸収解消せしめるにとどめず、

これと並んで、それらの利益の全部又は

一部につきそれが帰属する個々人の個別的利益としても

これを保護すべきものとすることももとより可能であって、

特定の法律の規定がこのような趣旨を含むものと解されるときは、

右法律の規定に違反してされた行政庁の処分に対し、

これらの利益を害されたとする個々人において

その処分の取消しを訴求する原告適格を有するものと解することに、

なんら妨げはないというべきである。

 

これを前記森林法所定の保安林指定処分についてみるのに、

右処分が一般的公益の保護を目的とする処分とみられることは

前記のとおりであるが、法は他方において、

利害関係を有する地方公共団体の長のほかに、

保安林の指定に「直接の利害関係を有する者」において、

森林を保安林として指定すべき旨を農林水産大臣に

申請することができるものとし(法27条1項)、また、

農林水産大臣が保安林の指定を解除しようとする場合に、

右の「直接の利害関係を有する者」がこれに異議があるときは、

意見書を提出し、公開の聴聞手続に

参加することができるものとしており(法29条、30条、32条)、

これらの規定と、旧森林法(明治40年法律第43号)24条においては

「直接利害ノ関係ヲ有スル者」に対して

保安林の指定及び解除の処分に対する訴願及び

行政訴訟の提起が認められていた沿革とをあわせ

考えると、法は、森林の存続によって

不特定多数者の受ける生活利益のうち一定範囲のものを

公益と並んで保護すべき個人の個別的利益としてとらえ、

かかる利益の帰属者に対し保安林の指定につき

「直接の利害関係を有する者」として

その利益主張をすることができる地位を

法律上付与しているものと解するのが相当である。

 

そうすると、かかる「直接の利害関係を有する者」は、

保安林の指定が違法に解除され、それによって

自己の利益を害された場合には、

右解除処分に対する取消しの訴えを

提起する原告適格を有する者ということができるけれども、

その反面、それ以外の者は、たといこれによって

なんらかの事実上の利益を害されることがあっても、

右のような取消訴訟の原告適格を

有するものとすることはできないというべきである。

 

訴えの利益の消滅について

上告人らの原告適格の基礎は、

本件保安林指定解除処分に基づく

立木竹の伐採に伴う理水機能の低下の影響を直接受ける点において

右保安林の存在による洪水や渇水の防止上の利益を

侵害されているところにあるのであるから、

本件におけるいわゆる代替施設の設置によって

右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは

本件保安林の存続の必要性がなくなったと

認められるに至ったときは、

もはや乙と表示のある上告人らにおいて

右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は

失われるに至ったものといわざるをえないのである。

 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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