点字ブロックの不設置の駅のホームの設置管理の瑕疵

(昭和61年3月25日最高裁)

事件番号  昭和58(オ)1132

 

この裁判では、

点字ブロックの不設置の駅のホームの設置管理の瑕疵について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、

営造物が通常有すべき安全性を欠く状態をいい、

かかる瑕疵の存否については、当該営造物の

構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を

総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである。

 

そして、点字ブロック等のように、

新たに開発された視力障害者用の安全設備を

駅のホームに設置しなかったことをもって

当該駅のホームが通常有すべき安全性を

欠くか否かを判断するに当たっては、

その安全設備が、視力障害者の事故防止に有効なものとして、

その素材、形状及び敷設方法等において

相当程度標準化されて全国的ないし

当該地域における道路及び駅のホーム等に普及しているかどうか、

当該駅のホームにおける構造又は視力障害者の利用度との関係から

予測される視力障害者の事故の発生の危険性の程度、

右事故を未然に防止するため右安全設備を設置する

必要性の程度及び右安全設備の設置の困難性の有無等の

諸般の事情を総合考慮することを

要するものと解するのが相当である。

 

原審が本件事故当時の点字ブロック等の標準化及び

普及の程度についてどのように認定したのかは明確でない。

 

のみならず、記録によれば、

甲第35号証(昭和50年3月に作成された

「昭和49年度建設技術研究補助金による道路における

盲人の誘導システム等に関する研究報告書」。

これは、建設省昭和49年度建設技術研究補助金による

研究委員会(その委員には、

厚生省国立東京視力障害センター指導課長、

警察庁交通局交通規制課課長補佐のほか、

安全センターの職員も含まれている。)の

研究の結果の報告書の抜粋である。)には、

点字ブロック等が開発以来、

盲人の歩行の安全に大きな効果を果たしてきたが、

まだ実用的応用の場も少なく、その素材、形状及び

敷設方法等においても統一されていない旨の記載がある。

 

更に、一審証人I(安全センター理事)は、

昭和45年に同人が関与した阪和線我孫子駅の

点字タイルの敷設方法は完全なものではなかった旨並びに

森の宮駅及び新今宮駅の各ホームに

昭和53年9月当時敷設されていた点字ブロック等は、

一辺が15センチメートルの正方形のもので、

敷設方法も間隔を空けて並べてあるため、

視力障害者のための安全設備としては

不完全である旨の証言をしており、また、

一審証人J(上告人の職員、大阪鉄道管理局勤務)は、

昭和49年ころまでに大阪近郊の私鉄や地下鉄等で

点字ブロツク等が設置されていたのは、

南海電鉄我孫子前駅及び地下鉄の長居駅しかなく、

昭和50年以降それが漸次増加してきている旨の証言をしている。

 

そして、これらの証拠の内容からは、点字ブロック等が、

昭和48年8月の本件事故当時、

視力障害者用の安全設備としての普及度が低く、

しかもその素材、形状及び敷設方法等において

必ずしも統一されていないことが窺えるのである。

 

しかしながら、原審は、右各証拠の内容について

何らの配慮を示していない。

 

更に、原審は、福島駅が島式ホームであって、

視力障害者にとって危険な駅であることを強調するが、

福島駅のホームが視力障害者の利用度との関係で

視力障害者の事故の発生の危険性が高かったか否かについても

検討を加えていない。

 

そうすると、右の諸点を検討しないで、

本件事故当時福島駅のホームに点字ブロック等が

敷設されていなかつたことをもって、

福島駅のホームが通常有すべき安全性を欠き、

その設置管理に瑕疵があったとした原判決には、

国家賠償法2条1項の解釈適用を誤ったか、又は

採証法則違背、審理不尽、理由不備の違法があるものというべきであり、

この違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は、理由がある。

 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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