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【行政判例】行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」 (平成4年9月22日最高裁)

行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」

(平成4年9月22日最高裁)

事件番号  平成1(行ツ)130

 

この裁判では、

行政事件訴訟法36条にいう

「法律上の利益を有する者」について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

規制法は、原子力基本法の精神にのっとり、核原料物質、

核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ、かつ、

これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに、

これらによる災害を防止し、及び核燃料物質を防護して、

公共の安全を図るために、製錬、加工、再処理及び

廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する

必要な規制等を行うことなどを目的として制定されたものである(一条)。

 

規制法23条1項に基づく原子炉の設置の許可申請は、

同項各号所定の原子炉の区分に応じ、主務大臣に対して行われるが、

主務大臣は、右許可申請が同法24条1項各号に適合していると

認めるときでなければ許可をしてはならず、また、

右許可をする場合においては、あらかじめ、

同項1号、2号及び3号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する

基準の適用については原子力委員会、

同項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び

4号に規定する基準の適用については、

核燃料物質及び原子炉に関する安全の確保のための規制等を

所管事項とする原子力安全委員会の意見を聴き、

これを十分に尊重してしなければならないものとされている(24条)。

 

同法24条1項各号所定の許可基準のうち、

3号(技術的能力に係る部分に限る。)は、

当該申請者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及び

その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき、また、

4号は、当該申請に係る原子炉施設の位置、構造及び

設備が核燃料物質(使用済燃料を含む。)、

核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)又は

原子炉による災害の防止上支障がないものであるか否かにつき、

審査を行うべきものと定めている。

 

原子炉設置許可の基準として、右の3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び

4号が設けられた趣旨は、原子炉が、

原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する

ウラン等の核燃料物質を燃料として使用する装置であり、

その稼働により、内部に多量の人体に有害な

放射性物質を発生させるものであって、

原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき

所定の技術的能力を欠くとき、

又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、

当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の

生命、身体に重大な危害を及ぼし、

周辺の環境を放射能によって汚染するなど、

深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、

右災害が万が一にも起こらないようにするため、

原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の

右技術的能力の有無及び申請に係る原子炉施設の位置、構造及び

設備の安全性につき十分な審査をし、右の者において

所定の技術的能力があり、かつ、原子炉施設の位置、構造及び

設備が右災害の防止上支障がないものであると認められる場合でない限り、

主務大臣は原子炉設置許可処分をしてはならないとした点にある。

 

そして、同法24条1項3号所定の技術的能力の有無及び

四号所定の安全性に関する各審査に過誤、欠落があった場合には

重大な原子炉事故が起こる可能性があり、事故が起こったときは、

原子炉施設に近い住民ほど被害を受ける蓋然性が高く、しかも、

その被害の程度はより直接的かつ重大なものとなるのであって、

特に、原子炉施設の近くに居住する者はその生命、身体等に

直接的かつ重大な被害を受けるものと想定されるのであり、

右各号は、このような原子炉の事故等が

もたらす災害による被害の性質を考慮した上で、

右技術的能力及び安全性に関する基準を定めているものと解される。

右の3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号の設けられた

趣旨、右各号が考慮している被害の性質等にかんがみると、

右各号は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を

一般的公益として保護しようとするにとどまらず、

原子炉施設周辺に居住し、右事故等がもたらす災害により

直接的かつ重大な被害を受けることが想定される

範囲の住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても

保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。

 

そして、当該住民の居住する地域が、

前記の原子炉事故等による災害により直接的かつ

重大な被害を受けるものと想定される地域であるか否かについては、

当該原子炉の種類、構造、規模等の当該原子炉に関する

具体的な諸条件を考慮に入れた上で、

当該住民の居住する地域と原子炉の位置との距離関係を中心として、

社会通念に照らし、合理的に判断すべきものである。

 

以上説示した見地に立って本件をみるのに、

上告人らは本件原子炉から約29キロメートルないし

約58キロメートルの範囲内の地域に居住していること、

本件原子炉は研究開発段階にある原子炉である高速増殖炉であり

(規制法23条1項4号、同法施行令6条の2第1項1号、

動力炉・核燃料開発事業団法2条1項参照)、

その電気出力は28万キロワットであって、

炉心の燃料としてはウランとプルトニウムの混合酸化物が用いられ、

炉心内において毒性の強いプルトニウムの増殖が

行われるものであることが記録上明らかであって、

かかる事実に照らすと、上告人らは、

いずれも本件原子炉の設置許可の際に行われる規制法24条1項3号所定の

技術的能力の有無及び四号所定の安全性に関する各審査に

過誤、欠落がある場合に起こり得る事故等による災害により

直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される

地域内に居住する者というべきであるから、

本件設置許可処分の無効確認を求める本訴請求において、

行政事件訴訟法36条所定の「法律上の利益を有する者」

に該当するものと認めるのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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