補助金を交付することの可否

(平成28年6月28日最高裁)

事件番号  平成25(行ヒ)562

 

この裁判では、

 地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)100条12項及び13項の

政務調査費の制度が設けられた後において,

普通地方公共団体が地方議会の会派に対し,

地方自治法232条の2に基づき補助金を交付することの可否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

平成12年改正により設けられた政務調査費の制度は,

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の施行により,

地方公共団体の自己決定権や自己責任が拡大し,

その議会の担う役割がますます重要なものとなってきていることに鑑み,

議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,

議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し,

併せてその使途の透明性を確保しようとしたものである。

 

このような同改正の趣旨及び目的に照らせば,

同改正により政務調査費の制度が設けられたことは,

従前,会派に交付されていた補助金のうち,

「調査研究に資するため必要な経費」(地方自治法100条旧12項)について,

以後はこれを政務調査費という

新たな法制度に基づいて交付することができるものとし,

政務調査費の交付の対象,額等については,

議会が自主的に制定する条例で

定めなければならないものとするとともに(同項),

その使途の透明性確保のための定めを

置いたこと(同条旧13項)に意義があったと認められる。

 

そうすると,平成12年改正後において,会派に対し,

政務調査費の対象とされた上記の

「調査研究に資するため必要な経費」を交付するためには,

当該政務調査費の交付の対象,額等について定めた条例に基づいて

これを行う必要が生じたというべきであり,

従前のようにこれを地方自治法232条の2に基づく

補助金として交付することは許容されなくなったものというべきである。

 

地方自治法100条旧12項及び旧13項は,

上記の「調査研究に資するため必要な経費」

以外の経費に対する補助の可否については

特に触れるところがなく,平成12年改正の際に,

そのような補助を禁止する旨の規定が置かれることもなかったところ,

同改正に係る立法過程においても,

そのような補助を禁止すべきものとする旨の

特段の検討がされていたとはうかがわれない。

 

これらによれば,同改正が,上記の

「調査研究に資するため必要な経費」以外の経費に対する補助を

禁止する趣旨でされたものであるとは認められない。

 

そうすると,普通地方公共団体は,平成12年改正により

政務調査費の制度が設けられた後においても,地方議会の会派に対し,

地方自治法100条旧12項に定める

「調査研究に資するため必要な経費」以外の経費を対象として,

同法232条の2に基づき,補助金を交付することができるというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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