道路交通法と集団行進及び集団示威運動に関する条例

(昭和50年9月10日最高裁)

事件番号  昭和48(あ)910

 

最高裁判所の見解

道路交通法は道路交通秩序の維持を目的とするのに対し、

本条例は道路交通秩序の維持にとどまらず、

地方公共の安寧と秩序の維持という、

より広はん、かつ、総合的な目的を有するのであるから、

両者はその規制の目的を全く同じくするものとはいえないのである。

 

もっとも、地方公共の安寧と秩序の維持という概念は広いものであり、

道路交通法の目的である道路交通秩序の維持をも内包するものであるから、

本条例3条3号の遵守事項が単純な交通秩序違反行為をも

対象としているものとすれば、それは道路交通法77条3項による

警察署長の道路使用許可条件と部分的には共通する点がありうる。

 

しかし、そのことから直ちに、

本条例3条3号の規定が国の法令である

道路交通法に違反するという結論を導くことはできない。

 

すなわち、地方自治法14条1項は、

普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて

同法2条2項の事務に関し条例を制定することができる、

と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が

国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、

条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と

規定文言を対比するのみでなく、

それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、

両者の間に矛盾牴触があるかどうかによって

これを決しなければならない。

 

例えば、ある事項について国の法令中に

これを規律する明文の規定がない場合でも、

当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に

当該事項についていかなる規制をも施すことなく

放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、

これについて規律を設ける条例の規定は

国の法令に違反することとなりうるし、逆に、

特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、

後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、

その適用によって前者の規定の意図する目的と

効果をなんら阻害することがないときや、

両者が同一の目的に出たものであっても、

国の法令が必ずしもその規定によって全国的に

一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、

それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、

別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、

国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、

条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。

 

これを道路交通法77条及びこれに基づく

徳島県道路交通施行細則と本条例についてみると、

徳島市内の道路における集団行進等について、

道路交通秩序維持のための行為規制を

施している部分に関する限りは、

両者の規律が併存競合していることは、

これを否定することができない。

 

しかしながら、道路交通法77条1項4号は、

同号に定める通行の形態又は方法による道路の特別使用行為等を

警察署長の許可によって個別的に解除されるべき

一般的禁止事項とするかどうかにつき、

各公安委員会が当該普通地方公共団体における道路又は

交通の状況に応じてその裁量により決定するところにゆだね、

これを全国的に一律に定めることを避けているのであって、

このような態度から推すときは、右規定は、

その対象となる道路の特別使用行為等につき、

各普通地方公共団体が、条例により

地方公共の安寧と秩序の維持のための規制を施すにあたり、

その一環として、これらの行為に対し、

道路交通法による規制とは別個に、

交通秩序の維持の見地から一定の規制を施すこと

自体を排斥する趣旨まで含むものとは考えられず、

各公安委員会は、このような規制を施した条例が存在する場合には、

これを勘案して、右の行為に対し

道路交通法の前記規定に基づく規制を施すかどうか、また、

いかなる内容の規制を施すかを

決定することができるものと解するのが、相当である。

 

そうすると、道路における集団行進等に対する

道路交通秩序維持のための具体的規制が、

道路交通法七七条及びこれに基づく

公安委員会規則と条例の双方において

重複して施されている場合においても、

両者の内容に矛盾牴触するところがなく、

条例における重複規制がそれ自体としての

特別の意義と効果を有し、かつ、

その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、

このような条例による規制を否定、排除する趣旨ではなく、

条例の規制の及ばない範囲においてのみ

適用される趣旨のものと解するのが相当であり、

したがって、右条例をもって

道路交通法に違反するものとすることはできない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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