道路法70条1項の定める損失の補償の対象

(昭和58年2月18日最高裁)

事件番号  昭和54(行ツ)155

 

この裁判では、

道路法70条1項の定める損失の補償の対象について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

道路法70条1項の規定は、道路の新設又は

改築のための工事の施行によって当該道路と

その隣接地との間に高低差が生ずるなど

土地の形状の変更が生じた結果として、

隣接地の用益又は管理に障害を来し、

従前の用法に従ってその用益又は管理を維持、継続していくためには、

用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上

当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、

みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を

増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を

新たに設置し、又は切土若しくは盛土をする

やむを得ない必要があると認められる場合において、

道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を

補償しなければならないものとしたものであって、

その補償の対象は、道路工事の施行による

土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は

管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があってした

前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は

切土若しくは盛土の工事に起因する損失に

限られると解するのが相当である。

 

したがって、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき

保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする

技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、

警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように

工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被ったとしても、

それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失が

たまたま現実化するに至ったものにすぎず、

このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には

属しないものというべきである。

 

これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、

被上告人は、その経営する石油給油所において

ガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、

上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、

右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、

危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める

技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、

右地下貯蔵タンクを別の場所に

移設せざるを得なくなったというのであって、

これによって被上告人が被った損失は、

まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、

道路法70条1項の定める補償の対象には

属しないといわなければならない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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