都有行政財産である土地についての使用許可の取消と損失補償

(昭和49年2月5日最高裁)

事件番号  昭和44(オ)628

 

この裁判では、

都有行政財産である土地の

使用許可の取消と損失補償について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

当時の国有財産法は、すでに、

普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による

損失補償の規定をもうけ(同法24条)、

これを行政財産に準用していた(同法19条)ところ、

国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、

公平の原則からしても国有財産法の右規定は

都有行政財産の使用許可の場合に

これを類推適用すべきものと解するのが相当であって、

これは憲法29条3項の趣旨にも合致する

 

したがって、本件損失補償については、

これを直接憲法29条3項にもとづいて

論ずるまでもないのである。

 

国有財産法24条2項は「これに因って生じた損失」につき

補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して

使用権者に損失が生じても、

使用権者においてその損失を受忍すべきときは、

右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には

当たらないと解すべきところ、

原判決の前記判示によれば、被上告人は、

上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき

使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、

当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて

右使用許可が取り消されたものということができる。

 

このような公有行政財産たる土地は、

その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、

その性質上行政財産本来の用途または

目的のために利用されるべきものであって、

これにつき私人の利用を許す場合に

その利用上の法律関係をいかなるものにするかは、

立法政策に委ねられているところと解される。

 

この点につき、昭和38年法律第九九号によって

改正された地方自治法238条の4は、

行政財産はその用途または目的を妨げない限度において

その使用を許可することができる旨規定したのであるが、

同法施行前においては、右改正前の地方自治法213条1項が

公有財産の管理、処分等については条例の定めに委ねていたところ、

本件については、昭和23年1月13日東京都条例第3号東京都都有財産条例3条

および同条例全部を改正した昭和29年3月31日

東京都条例第17号東京都都有財産条例12条において

前記改正後の地方自治法238条の四と同旨の定めがされ、

さらに古くは昭和19年3月9日東京都規則第4号東京都都有財産規則3条において

同旨の定めがされていたのである(なお、国有財産法18条参照)。

 

したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき

使用許可によって与えられた使用権は、

それが期間の定めのない場合であれば、

当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときは

その時点において原則として消滅すべきものであり、また、

権利自体に右のような制約が内在しているものとして

付与されているものとみるのが相当である。

 

例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たり

その対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により

右対価を償却するに足りないと認められる期間内に

当該行政財産に右の必要を生じたとか、

使用許可に際し別段の定めがされている等により、

行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者が

なお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる

特別の事情が存する場合に限られるというべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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