抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡

(平成10年1月30日最高裁)

事件番号  平成9(オ)419

 

この裁判では、

抵当権者による物上代位権の行使と

目的債権の譲渡について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

民法372条において準用する304条一項ただし書が

抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は

引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、

主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、

右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、

右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に

弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を

抵当権者に対抗できないという

不安定な地位に置かれる可能性があるため、

差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、

差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、

右弁済による目的債権消滅の効果を

抵当権者にも対抗することができることにして、

二重弁済を強いられる危険から

第三債務者を保護するという点にあると解される。

 

右のような民法304条一項の趣旨目的に照らすと、

同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、

抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され

第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、

自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を

行使することができるものと解するのが相当である。

 

けだし、民法304条一項の「払渡又ハ引渡」という言葉は

当然には債権譲渡を含むものとは解されないし、

物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に

抵当権の効力が右目的債権に

及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、

物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が

物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において、

第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に

債権譲受人に弁済した債権については

その消滅を抵当権者に対抗することができ、

弁済をしていない債権については

これを供託すれば免責されるのであるから、

抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても

第三債務者の利益が害されることとはならず、

抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは

抵当権設定登記により公示されているとみることができ、

対抗要件を備えた債権譲渡が

物上代位に優先するものと解するならば、

抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に

債権譲渡をすることによって容易に

物上代位権の行使を免れることができるが、

このことは抵当権者の利益を

不当に害するものというべきだからである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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