離婚による慰籍料と財産分与との関係

(昭和46年7月23日最高裁)

事件番号  昭和43(オ)142

 

この裁判では、すでに財産分与がなされた場合において、

別個に、相手方の不法行為を理由として

離婚による慰籍料を請求することができるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件慰藉料請求は、上告人と被上告人との間の

婚姻関係の破綻を生ずる原因となった上告人の

虐待等、被上告人の身体、自由、名誉等を侵害する個別の違法行為を

理由とするものではなく、被上告人において、

上告人の有責行為により離婚をやむなくされ

精神的苦痛を被つたことを理由として

その損害の賠償を求めるものと解される。

 

離婚における財産分与の制度は、

夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、

離婚後における一方の当事者の生計の維持を

はかることを目的とするものであって、

分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき

有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、

相手方の有責な行為によって離婚をやむなくされ

精神的苦痛を被ったことに対する慰藉料の請求権とは、

その性質を必ずしも同じくするものではない

 

したがって、すでに財産分与がなされたからといって、

その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは

妨げられないというべきである。

 

もっとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに

分与の額および方法を定めるについては、

当事者双方におけるいっさいの事情を考慮すべきものであるから、

分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であって、

その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被った

精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、

右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および

方法を定めることもできると解すべきである。

 

そして、財産分与として、右のように損害賠償の要素をも含めて

給付がなされた場合には、さらに請求者が

相手方の不法行為を理由に離婚そのものによる

慰謝料の支払を請求したときに、

その額を定めるにあたっては、右の趣旨において

財産分与がなされている事情をも斟酌しなければならないのであり、

このような財産分与によって請求者の精神的苦痛がすべて

慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて

慰藉料の請求を認容することはできないものと解すべきである。

 

しかし、財産分与がなされても、

それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、

そうでないとしても、その額および方法において、

請求者の精神的苦痛を慰藉するには

足りないと認められるものであるときには、

すでに財産分与を得たという一事によって

慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、

別個に不法行為を理由として離婚による慰藷料を請求することを

妨げられないものと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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