運転代行業者と自動車損害賠償保障法2条3項の保有者

(平成9年10月31日最高裁)

事件番号  平成6(オ)1370

 

この裁判では、

運転代行業者と自動車損害賠償保障法2条3項の保有者について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

P代行は、運転代行業者であり、

本件自動車の使用権を有する被上告人の依頼を受けて、

被上告人を乗車させて本件自動車を同人の自宅まで

運転する業務を有償で引き受け、代行運転者である

Fを派遣して右業務を行わせていたのであるから、

本件事故当時、本件自動車を使用する権利を有し、

これを自己のために運行の用に供していたものと認められる。

 

したがって、P代行は、法2条3項の

「保有者」に当たると解するのが相当である。

 

ところで、自動車の所有者は、第三者に

自動車の運転をゆだねて同乗している場合であっても、

事故防止につき中心的な責任を負う者として、

右第三者に対して運転の交代を命じ、

あるいは運転につき具体的に

指示することができる立場にあるのであるから、

特段の事情のない限り、右第三者に対する関係において、

法3条の「他人」に当たらないと解すべきところ

(最高裁昭和55年の(オ)第1121号同57年11月26日

第二小法廷判決民集36巻11号2318頁参照)、

正当な権原に基づいて自動車を常時使用する者についても、

所有者の場合と同様に解するのが相当である。

 

そこで、本件について特段の事情の有無を検討するに、

前記事実関係によれば、被上告人は、

飲酒により安全に自動車を運転する能力、適性を欠くに至ったことから、

自ら本件自動車を運転することによる

交通事故の発生の危険を回避するために、

運転代行業者であるP代行に

本件自動車の運転代行を依頼したものであり、

他方、P代行は、運転代行業務を引き受けることにより、

被上告人に対して、本件自動車を安全に運行して

目的地まで運送する義務を負ったものと認められる。

 

このような両者の関係からすれば、本件事故当時においては、

本件自動車の運行による事故の発生を防止する

中心的な責任はP代行が負い、被上告人の運行支配は

P代行のそれに比べて間接的、補助的なものに

とどまっていたものというべきである。

 

したがって、本件は前記特段の事情のある場合に該当し、

被上告人は、P代行に対する関係において、

法3条の「他人」に当たると解するのが相当である

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

交通事故判例コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事