情報公開と知る権利

(平成6年1月27日最高裁)

事件番号  平成3(行ツ)18

 

大阪府住民Xらは、大阪府公文書公開等条例

(昭和五九年大阪府条例第二号)7条1項に基づき、

大阪府知事Yに対し、大阪府知事の交際費についての

公文書の公開(閲覧及び写しの交付)を請求しましたが、

非公開事由に該当するとしてYが非公開を決定し、

Xが異議を申し立てましたが、Yが棄却したので、

Xは取消訴訟を提起しました。

 

一審は非公開事由に該当しないとして決定を取消し、

二審も支持し、Yが上告しました。

 

最高裁判所の見解を解説

知事の交際事務には、

懇談、慶弔、見舞い、賛助、協賛、餞別など

様々なものがあり、これらは、相手方との間の信頼関係ないし

友好関係の維持増進を目的として行われるものです。

 

これらの事務に関する情報を記録した

文書を公開しないことができるか否かは、

これらの情報を公にすることにより、当該若しくは

同種の交渉等事務としての交際事務の目的が

達成できなくなるおそれがあるか否か、

又は当該若しくは同種の企画調整等事務や交渉等事務としての

交際事務を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼす

おそれがあるか否かによって決定されることになります。

 

相手方の氏名等の公表、披露が

当然予定されているような場合等は別として、

相手方を識別し得るような前記文書の公開によって

相手方の氏名等が明らかにされることになれば、

懇談については、相手方に不快、不信の感情を抱かせ、

今後府の行うこの種の会合への出席を

避けるなどの事態が生ずることも考えられ、

また、一般に、交際費の支出の要否、内容等は、

府の相手方とのかかわり等を

しん酌して個別に決定されるという性質を

有するものであることから、

不満や不快の念を抱く者が出ることが予想されます。

 

そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは

友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、

ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあります。

 

交際費の支出の要否やその内容等は、

支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、

裁量によって決定すべきものであるところ、

交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、

知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、

必要な交際費の支出を差し控え、

あるいはその支出を画一的にすることを

余儀なくされることも考えられ、

知事の交際事務を適切に行うことに

著しい支障を及ぼすおそれがあります。

 

したがって、本件文書のうち

交際の相手方が識別され得るものは、

相手方の氏名等が外部に公表、披露されることが

もともと予定されているものなど、

相手方の氏名等を公表することによって

前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、

懇談に係る文書については本件条例8条4号又は5号により、

その余の慶弔等に係る文書については同条5号により、

公開しないことができる文書に該当するというべきとされました。

 

また、本件における知事の交際は、

それが知事の職務としてされるものであっても、

私人である相手方にとっては、

私的な出来事といわなければならない。

 

本件条例9条1号は、私事に関する情報のうち

性質上公開に親しまないような個人情報が記録されている文書を

公開してはならないとしているものと解されるが、

知事の交際の相手方となった私人としては、懇談の場合であると、

慶弔等の場合であるとを問わず、その具体的な費用、

金額等までは一般に他人に知られたくないと望むものであり、

そのことは正当であると認められる。そうすると、

このような交際に関する情報は、その交際の性質、内容等からして

交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと

予定されているものを除いては、

同号に該当するというべきであるとしました。

 

したがって、本件文書のうち私人である相手方に係るものは、

相手方が識別できるようなものであれば、原則として、

同号により公開してはならない文書に

該当するというべきであるとしました。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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