建築確認による建築主の損害と国家賠償責任

(平成25年3月26日最高裁)

事件番号  平成22(受)2101

 

この裁判では、

建築確認による建築主の損害と国家賠償責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

建築士が設計した計画に基づいて建築される建築物の安全性が

第一次的には上記のような建築士法上の規律に従った

建築士の業務の遂行によって確保されるべきものであり,

建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主による

建築基準法6条1項に基づく確認の申請が,

自ら委託(再委託を含む。以下同じ。)をした

建築士の設計した建築物の計画が

建築基準関係規定に適合することについての

確認を求めてするものであるとはいえ,

個別の国民である建築主が同法1条にいう国民に含まれず,

その建築する建物に係る建築主の利益が同法における

保護の対象とならないとは解し難い。

 

建築確認制度の目的には,建築基準関係規定に違反する

建築物の出現を未然に防止することを通じて得られる

個別の国民の利益の保護が含まれており,

建築主の利益の保護もこれに含まれているといえるのであって,

建築士の設計に係る建築物の計画について確認をする建築主事は,

その申請をする建築主との関係でも,

違法な建築物の出現を防止すべく

一定の職務上の法的義務を負うものと解するのが相当である。

 

建築主事による当該計画に係る建築確認は,例えば,

当該計画の内容が建築基準関係規定に

明示的に定められた要件に適合しないものであるときに,

申請書類の記載事項における誤りが明らかで,

当該事項の審査を担当する者として他の記載内容や

資料と符合するか否かを当然に照合すべきであったにもかかわらず

その照合がされなかったなど,

建築主事が職務上通常払うべき注意をもって

申請書類の記載を確認していれば

その記載から当該計画の建築基準関係規定への不適合を

発見することができたにもかかわらずその注意を怠って

漫然とその不適合を看過した結果当該計画につき

建築確認を行ったと認められる場合に,

国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。

 

その不適合に係る建築主の認識の有無又は帰責性の程度,

その不適合によって建築主の受けた損害の性質及び内容,

その不適合に係る建築主事の注意義務違反の程度又は

認識の内容その他の諸般の事情に照らして,

建築確認の申請者である建築主が自らの申請に応じて

建築主事のした当該計画に係る建築確認の違法を主張することが

信義則に反するなどと認められることにより,

当該建築主が当該建築確認の違法を理由として

国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を

することができないものとされる場合が

あることは否定できない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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