弁護士法23条の2に基づく前科及び犯罪経歴の照会

(昭和56年4月14日最高裁)

事件番号  昭和52(オ)323

 

この裁判では、

弁護士法23条の2に基づく前科及び犯罪経歴の照会について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は

人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、

前科等のある者もこれをみだりに公開されないという

法律上の保護に値する利益を有するのであって、

市区町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する

犯罪人名簿に記載されている前科等を

みだりに漏えいしてはならないことは

いうまでもないところである。

 

前科等の有無が訴訟等の重要な争点となっていて、

市区町村長に照会して回答を得るのでなければ

他に立証方法がないような場合には、

裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長は、

これに応じて前科等につき回答をすることができるのであり、

同様な場合に弁護士法23条の2に基づく照会に応じて

報告することも許されないわけのものではないが、

その取扱いには格別の慎重さが

要求されるものといわなければならない。

 

本件において、原審の適法に確定したところによれば、

京都弁護士会が訴外D弁護士の申出により

京都市伏見区役所に照会し、

同市中京区長に回付された被上告人の前科等の照会文書には、

照会を必要とする事由としては、

右照会文書に添付されていたD弁護士の照会申出書に

「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」

とあったにすぎないというのであり、このような場合に、

市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、

軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、

公権力の違法な行使にあたると解するのが相当である。

 

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、

中京区長の本件報告を過失による

公権力の違法な行使にあたるとした原審の判断は、

結論において正当として是認することができる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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