抗告訴訟の対象たる行政庁の公権力行使にあたる行為の要件

(昭和39年10月29日最高裁)

事件番号  昭和37(オ)296

 

この裁判では、

抗告訴訟の対象たる行政庁の

公権力行使にあたる行為の要件について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

行政事件訴訟特例法1条にいう行政庁の処分とは、

所論のごとく行政庁の法令に基づく行為の

すべてを意味するものではなく、

公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、

その行為によって、直接国民の権利義務を形成し

またはその範囲を確定することが

法律上認められているものをいうものであることは、

当裁判所の判例とするところである。

 

そして、かかる行政庁の行為は、

公共の福祉の維持、増進のために、

法の内容を実現することを目的とし、

正当の権限ある行政庁により、

法に準拠してなされるもので、

社会公共の福祉に極めて関係の深い事柄であるから、

法律は、行政庁の右のような行為の特殊性に鑑み、

一方このような行政目的を可及的速かに達成せしめる必要性と、

他方これによつて権利、利益を侵害された者の

法律上の救済を図ることの必要性とを勘案して、

行政庁の右のような行為は仮りに違法なものであっても、

それが正当な権限を有する機関により取り消されるまでは、

一応適法性の推定を受け有効として

取り扱われるものであることを認め、

これによって権利、利益を侵害された者の救済については、

通常の民事訴訟の方法によることなく、

特別の規定によるべきこととしたのである。

 

従ってまた、行政庁の行為によって

権利、利益を侵害された者が、

右行為を当然無効と主張し、

行政事件訴訟特例法によって救済を求め得るには、

当該行為が前叙のごとき性質を有し、

その無効が正当な権限のある機関により確認されるまでは

事実上有効なものとして

取り扱われている場合でなければならない。

 

ところで、原判決の確定した事実によれば、

本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに

私人から買収した都所有の土地の上に、

私人との間に対等の立場に立って締結した

私法上の契約により設置されたものであるというのであり、

原判決が被上告人都において本件ごみ焼却場の設置を計画し、

その計画案を都議会に提出した行為は

被上告人都自身の内部的手続行為に止まると解するのが

相当であるとした判断は、是認できる。

 

それ故、仮りに右設置行為によって上告人らが

所論のごとき不利益を被ることがあるとしても、

右設置行為は、被上告人都が公権力の行使により

直接上告人らの権利義務を形成し、または

その範囲を確定することを法律上認められている場合に

該当するものということを得ず、原判決が

これをもって行政事件訴訟特例法にいう

「行政庁の処分」にあたらないからその無効確認を求める

上告人らの本訴請求を不適法であるとしたことは、

結局正当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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