漁業調整規則が適用される範囲

(昭和46年4月22日最高裁)

事件番号  昭和44(あ)2736

 

この裁判では、

漁業調整規則が適用される範囲について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

思うに、漁業法65条1項および

水産資源保護法4条1項の規定に基づいて

制定された北海道海面漁業調整規則(以下、本件規則という。)36条の規定は、

本来、北海道地先海面であって、

右各法律および本件規則の目的である

水産資源の保護培養および維持ならびに

漁業秩序の確立のための漁業取締り

その他漁業調整を必要とし、かつ、

主務大臣または北海道知事が

漁業取締りを行なうことが可能である

範囲の海面における漁業、すなわち、

以上の範囲の、わが国領海における漁業および公海における

日本国民の漁業に適用があるものと解せられる

(本件規則前文、1条、漁業法84条1項、

昭和25年農林省告示129号「漁業法による海区指定」参照)。

 

そして、わが国の漁船がわが国領海および

公海以外の外国の領海において漁業を営んだ場合、

特別の取決めのないかぎり、原則として、わが国は、

その海面自体においてはその漁船に対する

臨場検査等の取締り(漁業法134条参照)の権限を

行使しえないものである。

 

しかし、前記各法律および本件規則の目的とするところを

十分に達成するためには、何らの境界もない

広大な海洋における水産動植物を対象として

行なわれる漁業の性質にかんがみれば、

日本国民が前記範囲のわが国領海および公海と連接して

一体をなす外国の領海においてした

本件規則36条に違反する行為をも

処罰する必要のあることは、いうをまたないところであり、

それゆえ、本件規則36条の漁業禁止の規定および

その罰則である本件規則55条は、当然日本国民がかかる

外国の領海において営む漁業にも

適用される趣旨のものと解するのが相当である。

 

すなわち、本件規則55条は、

前記の目的をもつ前記各法律および

本件規則の性質上、わが国領海内における

同規則36条違反の行為のほか、

前記範囲の公海およびこれらと連接して

一体をなす外国の領海において日本国民がした

同規則36条違反の行為(国外犯)をも

処罰する旨を定めたものと解すべきである。

 

ところで、国後島に対しては、現在事実上

わが国の統治権が及んでいない状況にあるため、

同島の沿岸線から三海里以内の海面については、

北海道知事が日本国民に対し

漁業の免許もしくは許可を与え、

または臨場検査を行なうことが

できないものであるとしても、また、

かりに本件操業海域が同島の沿岸線から

三海里以内であったとしても、

同海域は、前記範囲のわが国領海および公海と連接して

一体をなす海面に属するものであるから、以上に述べたとおり、

本件規則36条によって日本国民が本件操業海域において

同条に掲げる漁業を営むことは禁止され、

これに違反した者は本件規則55条による処罰を

免れないものと解すべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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