総合設計許可の取消訴訟と第三者の原告適格

(平成14年1月22日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)7

 

この裁判では、

総合設計許可の取消訴訟と第三者の原告適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

建築基準法は,52条において建築物の容積率制限,

55条及び56条において高さ制限を定めているところ,

これらの規定は,本来,建築密度,建築物の規模等を

規制することにより,建築物の敷地上に適度な空間を確保し,

もって,当該建築物及びこれに隣接する

建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つことを

目的とするものであるが,そのほか,

当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,

隣接する建築物等に延焼するなどの危険を

抑制することをもその目的に含むものと解するのが相当である。

 

そして,同法59条の2第1項は,

上記の制限を超える建築物の建築につき,

一定規模以上の広さの敷地を有し,かつ,敷地内に

一定規模以上の空地を有する場合においては,

安全,防火等の観点から支障がないと

認められることなどの要件を満たすときに限り,

これらの制限を緩和することを認めている。

 

このように,同項は,必要な空間を確保することなどを要件として,

これらの制限を緩和して大規模な

建築物を建築することを可能にするものである。

 

容積率制限や高さ制限の規定の上記の趣旨・目的等をも考慮すれば,

同項が必要な空間を確保することとしているのは,

当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,

採光等を良好に保つなど快適な居住環境を

確保することができるようにするとともに,地震,火災等により

当該建築物が倒壊,炎上するなど万一の事態が生じた場合に,

その周辺の建築物やその居住者に

重大な被害が及ぶことがないようにするためであると解される。

 

そして,同項は,特定行政庁が,以上の各点について

適切な設計がされているかどうかなどを審査し,

安全,防火等の観点から支障がないと認めた場合にのみ

許可をすることとしているのである。

 

以上のような同項の趣旨・目的,同項が総合設計許可を通して

保護しようとしている利益の内容・性質等に加え,

同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて

国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを

目的とするものである(1条)ことにかんがみれば,

同法59条の2第1項は,上記許可に係る建築物の建築が

市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,

当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に

及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する

他の建築物についてその居住者の生命,身体の安全等及び

財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益としても

保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。

 

そうすると,総合設計許可に係る建築物の倒壊,

炎上等により直接的な被害を受けることが

予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又は

これを所有する者は,総合設計許可の取消しを求めるにつき

法律上の利益を有する者として,

その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

行政判例コーナー

行政法の解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事