厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことの国家賠償責任

(平成7年6月23日最高裁)

事件番号  平成1(オ)1260

 

この裁判では、

厚生大臣が医薬品の副作用による

被害の発生を防止するために

薬事法上の権限を行使しなかったことの

国家賠償責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

厚生大臣が特定の医薬品を日本薬局方に収載し、

又はその製造の承認をした場合において、

その時点における医学的、薬学的知見の下で、

当該医薬品がその副作用を考慮してもなお

有用性を肯定し得るときは、

厚生大臣の薬局方収載等の行為は、

国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を

受けることはないというべきである。

 

右の理は、製造の承認とその目的、性質を同じくする

医薬品の製造の許可(旧薬事法26条3項)についても

変わるところはないものと解される。

 

これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、

厚生大臣がクロロキン製剤について前記一3記載の各行為をした

昭和三五年から昭和39年までの間においては、

その副作用であるクロロキン網膜症に関する報告が

内外の文献に現れ始めたばかりであって、

報告内容も長期連用の場合の

クロロキン網膜症の発症の危険性及び

早期発見のための眼科的検査の必要性を指摘するにとどまり、

クロロキン製剤の有用性を否定するものではなく、

この間に我が国で報告された症例は

合計七件であったというのであるから、

これらの文献や症例報告に基づく当時の医学的、

薬学的知見の下においては、厚生大臣が、

腎疾患及びてんかんを含めた前記各疾患に対する

クロロキン製剤の有用性を肯定し得るものとして行った

前記各行為に違法はないというべきである。

 

医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、

厚生大臣が当該医薬品の副作用による被害の発生を防止するために

前記の各権限を行使しなかったことが直ちに

国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるものではなく、

副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における

医学的、薬学的知見の下において、前記のような

薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、

右権限の不行使がその許容される限度を逸脱して

著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使は、

副作用による被害を受けた者との関係において

同項の適用上違法となるものと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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