行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」

(平成14年10月24日最高裁)

事件番号  平成12(行ヒ)174

 

この裁判では、

行政不服審査法14条1項にいう

「処分があったことを知った日」について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

都市計画事業の認可は,

事業地内の土地につき所有権等を有する者に

効力の及ぶ処分であるが,都市計画法は,

これらの関係権利者に個別に同認可の通知をするものとはせず,

同認可の告示を行うものとするにとどめている。

 

これは,都市計画事業を円滑に進めるためには,

その認可の効力を関係権利者の

全員に同時に及ぼす必要がある一方で,

一般に,その全員を確実に把握して同時期に

個別の通知を到達させることが極めて困難であり,かつ,

同認可が特定の事業地を対象として行ういわば

対物的な処分の性質を有することから,

これを特定の個人を名あて人として行わないものとした上,

告示という方法により画一的に関係権利者等に

これを告知することとしたものと解される。

 

このような同法の趣旨からするならば,

告示の時に関係権利者にその内容が告知されたとみるべきであり,

個々の関係権利者が告示の内容を現実に知るまでは告知が

あったものとはいえないとすると,

その趣旨は全うされないこととなる。

 

そして,このような告知の方法を採ることには,

都市計画事業の認可の性質に照らして,

相応の合理性がある上,同法は,告示に加えて,

市町村の事務所において事業地を表示する図面等を縦覧に供させる

(同法62条2項,同法施行規則49条)とともに,

施行者において速やかに都市計画事業の概要について

事業地及びその付近地の住民に説明するなどの措置を

講じなければならないものとして(同法66条),

同認可の周知を図ることとし,

関係権利者の保護にも配慮しているものである。

 

行政不服審査法14条1項本文の規定する

「処分があったことを知った日」というのは,

処分がその名あて人に個別に通知される場合には,

その者が処分のあったことを現実に知った日のことをいい,

処分があったことを知り得たというだけでは足りない

(最高裁昭和26年(オ)第392号

同27年11月20日第一小法廷判決・民集6巻10号1038頁参照)。

 

しかし,都市計画法における都市計画事業の認可のように,

処分が個別の通知ではなく告示をもって

多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には,

そのような告知方法が採られている趣旨にかんがみて,

上記の「処分があったことを知った日」というのは,

告示があった日をいうと解するのが相当である

(原判決掲記の最高裁昭和60年(行ツ)第207号

同61年6月19日第一小法廷判決・裁判集民事148号239頁は,

建築基準法46条に基づく壁面線の指定及びその公告につき,

同旨をいうものである。)。

 

以上によれば,前記のとおり,

本件認可の告示がされたのは平成8年9月13日であり,

被上告人がこれに対する審査請求をしたのは

同年12月2日であったというのであるから,

被上告人が本件認可を現実に知った日がいつであるかにかかわりなく,

同審査請求は行政不服審査法14条1項本文の期間を

経過した後にされたものであることが明らかであり,

論旨は理由がある。

 

これと異なる原審の前記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,

原判決は破棄を免れない。

 

そして,同項ただし書に規定するやむを得ない理由につき

何らの主張,立証のない本件においては,

同審査請求は同項に違反する

不適法なものであるというべきである。

 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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