農地法80条に基づく農林大臣の認定および売払いの性質

(昭和46年1月20日最高裁)

事件番号  昭和42(行ツ)52

 

この裁判では、

農地法80条に基づく農林大臣の認定および

売払いの性質について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

私有財産の収用が正当な補償のもとに行なわれた場合において

その後にいたり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、

これを被収用者に返還しなければならないものではない。

 

しかし、収用が行なわれた後当該収用物件につき

その収用目的となった公共の用に供しないことを

相当とする事実が生じた場合には、なお、

国にこれを保有させ、その処置を原則として

国の裁量にまかせるべきであるとする合理的理由はない

 

したがって、このような場合には、

被収用者にこれを回復する権利を保障する措置をとることが

立法政策上当を得たものというべく、

法80条の買収農地売払制度も右の趣旨で

設けられたものと解すべきである。

 

ところで、令16条4号が、前記のように、

買収農地のうち法80条1項の認定の対象となるべき

土地を買収後新たに生じた公用等の

目的に供する緊急の必要があり、かつ、

その用に供されることが確実なものに制限していることは、

その規定上明らかである。

 

その趣旨は、買収の目的を重視し、

その目的に優先する公用等の

目的に供する緊急の必要があり、かつ、

その用に供されることが確実な場合にかぎり

売り払うべきこととしたものと考えられる。

 

同項は、その規定の体裁からみて、

売払いの対象を定める基準を政令に

委任しているものと解されるが、

委任の範囲にはおのずから限度があり、

明らかに法が売払いの対象として

予定しているものを除外することは、

前記法80条に基づく売払制度の趣旨に照らし、

許されないところであるといわなければならない。

 

農地改革のための臨時立法であった自創法とは異なり、法は、

恒久立法であるから、同条による売払いの要件も、

当然、長期にわたる社会、

経済状勢の変化にも対処できるものとして

規定されているはずのものである。

 

したがって、農地買収の目的に優先する

公用等の目的に供する緊急の必要があり、かつ、

その用に供されることが確実であるという場合ではなくても、

当該買収農地自体、社会的、経済的にみて、

すでにその農地としての現況を

将来にわたって維持すべき意義を失い、

近く農地以外のものとすることを相当とするもの

(法7条1項4号参照)として、

買収の目的である自作農の創設等の目的に

供しないことを相当とする状況にあると

いいうるものが生ずるであろうことは、

当然に予測されるところであり、法80条は、

もとよりこのような買収農地についても旧所有者への売払いを

義務付けているものと解されなければならないのである。

 

したがって、同条の認定をすることができる場合につき、

令16条が、自創法3条による買収農地については

令16条4号の場合にかぎることとし、

それ以外の前記のような場合につき

法80条の認定をすることができないとしたことは、

法の委任の範囲を越えた無効のものというのほかはない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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