不真正連帯債務

(平成10年9月10日最高裁)

事件番号  平成9(オ)448

 

この裁判では、

共同不法行為者の一人と被害者との間で成立した

訴訟上の和解における債務の免除の効力が

他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

甲と乙が共同の不法行為により

他人に損害を加えた場合において、

甲が乙との責任割合に従って定められるべき

自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、

甲は、乙の負担部分について求償することができる。

 

この場合、甲と乙が負担する損害賠償債務は、

いわゆる不真正連帯債務であるから、

甲と被害者との間で訴訟上の和解が成立し、

請求額の一部につき和解金が支払われるとともに、

和解調書中に「被害者はその余の請求を放棄する」旨の条項が設けられ、

被害者が甲に対し残債務を免除したと解し得るときでも、

連帯債務における免除の絶対的効力を定めた

民法437条の規定は適用されず、

乙に対して当然に免除の効力が及ぶものではない

 

被害者が、右訴訟上の和解に際し、

乙の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、

乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶものというべきである。

 

そして、この場合には、乙はもはや被害者から

残債務を訴求される可能性はないのであるから、

甲の乙に対する求償金額は、確定した損害額である

右訴訟上の和解における甲の支払額を基準とし、

双方の責任割合に従いその負担部分を定めて、

これを算定するのが相当であると解される

 

これを本件について見ると、

本件和解調書の記載からはIの意思は明確ではないものの、

記録によれば、Iは、被上告人に対して

裁判上又は裁判外で残債務の履行を請求した形跡もなく

(ちなみに、本件和解時においては、

既に右残債権について消滅時効期間が経過していた。)、かえって、

上告人が被上告人に対してEの負担部分につき

求償金の支払を求める本件訴訟の提起に

協力する姿勢を示していた等の事情がうかがわれないではない。

 

そうすると、Iとしては、

本件和解により被上告人との関係も含めて

全面的に紛争の解決を図る意向であり、

本件和解において被上告人の残債務をも

免除する意思を有していたと解する余地が十分にある。

 

したがって、本件和解に際し、

Iが被上告人に対しても残債務を免除する

意思を有していたか否かについて

審理判断することなく、上告人の被上告人に対する

求償金額を算定した原審の判断には、

法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法があるというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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