共同抵当の目的である物上保証人所有の不動産の後順位抵当権者の地位

(昭和60年5月23日最高裁)

事件番号  昭和56(オ)1175

 

この裁判では、

共同抵当の目的である物上保証人所有の

不動産の後順位抵当権者の地位について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

共同根抵当の目的である債務者所有の不動産と

物上保証人所有の不動産にそれぞれ債権者を異にする

後順位抵当権が設定されている場合において、

物上保証人所有の不動産について先に競売がされ、

その競落代金の交付により一番抵当権者が弁済を受けたときは、

物上保証人は債務者に対して求償権を取得するとともに、

代位により債務者所有の不動産に対する一番抵当権を取得するが、

物上保証人所有の不動産についての

後順位抵当権者(以下「後順位抵当権者」という。)は

物上保証人に移転した右抵当権から債務者所有の不動産についての

後順位抵当権者に優先して弁済を受けることができるものと

解するのが相当である。

 

右の場合において、

債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産について

共同根抵当権を有する債権者が物上保証人と

根抵当権設定契約を締結するにあたり、

物上保証人が弁済等によつて取得する権利は、

債権者と債務者との取引が継続している限り

債権者の同意がなければ行使しない旨の特約をしても、

かかる特約は、後順位抵当権者が物上保証人の取得した抵当権から

優先弁済を受ける権利を左右するものではないといわなければならない。

 

けだし、後順位抵当権者が物上保証人の取得した

一番抵当権から優先して弁済を受けることができるのは、

債権者が物上保証人所有の不動産に対する抵当権を実行して

当該債権の弁済を受けたことにより、

物上保証人が当然に債権者に代位し、

それに伴い、後順位抵当権者が物上保証人の取得した

一番抵当権にあたかも物上代位するように

これを行使しうることによるものであるが、

右特約は、物上保証人が弁済等をしたときに

債権者の意思に反して独自に抵当権等の実行をすることを禁止するにとどまり、

すでに債権者の申立によつて競売手続が行われている場合において

後順位抵当権者の右のような権利を消滅させる

効力を有するものとは解されないからである。

 

債権者が物上保証人の設定にかかる抵当権の実行によって

債権の一部の満足を得た場合、物上保証人は、

民法502条一項の規定により、債権者と共に

債権者の有する抵当権を行使することができるが、

この抵当権が実行されたときには、その代金の配当については

債権者に優先されると解するのが相当である。

 

けだし、弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して

取得する求償権を確保するための制度であり、

そのために債権者が不利益を被ることを予定するものではなく、

この担保権が実行された場合における競落代金の配当について

債権者の利益を害するいわれはないからである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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