共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合と後順位抵当権者の代位

(平成4年11月6日最高裁)

事件番号  平成1(オ)1688

 

この裁判では、

共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の

所有に属する場合と後順位抵当権者の代位について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、

甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、

甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、

民法392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が

同条一項の規定に従い乙不動産から

弁済を受けることができた金額に満つるまで、

先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する

抵当権を行使することができると解するのが相当である。

 

けだし、後順位抵当権者は、先順位の共同抵当権の負担を

甲・乙不動産の価額に準じて配分すれば甲不動産の担保価値に余剰が

生ずることを期待して、抵当権の設定を受けているのが通常であって、

先順位の共同抵当権者が甲不動産の代価につき

債権の全部の弁済を受けることができるため、

後順位抵当権者の右の期待が害されるときは、

債務者がその所有する不動産に共同抵当権を設定した場合と同様、

民法392条2項後段に規定する代位により、

右の期待を保護すべきものであるからである。

 

甲不動産の所有権を失った物上保証人は、

債務者に対する求償権を取得し、その範囲内で、

民法500条、501条の規定に基づき、

先順位の共同抵当権者が有した

一切の権利を代位行使し得る立場にあるが、

自己の所有する乙不動産についてみれば、

右の規定による法定代位を生じる余地はなく、

前記配分に従った利用を前提に

後順位の抵当権を設定しているのであるから、

後順位抵当権者の代位を認めても、

不測の損害を受けるわけではない。

 

所論引用の判例は、いずれも共同抵当権の目的不動産が

同一の物上保証人の所有に属する事案に

関するものではなく、本件に適切でない。

 

そして、右の場合において、先順位の共同抵当権者が

後順位抵当権者の代位の対象となっている乙不動産に対する

抵当権を放棄したときは、先順位の共同抵当権者は、

後順位抵当権者が乙不動産上の右抵当権に代位し得る限度で、

甲不動産につき、後順位抵当権者に優先することができないのであるから、

甲不動産から後順位抵当権者の右の優先額についてまで

配当を受けたときは、これを不当利得として、

後順位抵当権者に返還すべきものといわなければならない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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