過失相殺の要件

(昭和39年6月24日最高裁)

事件番号  昭和36(オ)412

 

この裁判では、

過失相殺の要件について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

未成年者が他人に加えた損害につき、

その不法行為上の賠償責仕を問うには、

未成年者がその行為の責任を弁識するに足る

知能を具えていることを要することは

民法712条の規定するところであるが、

他人の不法行為により未成年者が

こうむった損害の賠償額を定めるにつき、

被害者たる未成年者の過失をしんしゃくするためには、

未成年者にいかなる知能が具わっていることを要するかに関しては、

民法には別段の規定はなく、ただ、この場合においても、

被害者たる未成年者においてその行為の責任を

弁識するに足る知能を具えていないときは、

その不注意を直ちに被害者の過失となし民法722条2項を

適用すべきではないとする当裁判所の判例があることは、

所論のとおりである。

 

しかしながら、民法722条2項の過失相殺の問題は、

不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは

趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、

公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかに

しんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、

被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、

未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、

未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、

行為の責任を弁識するに足る知能が

具わっていることを要しないものと解するのが相当である。

 

したがって、前示判例は、これを変更すべきものと認める。

 

原審の確定するところによれば、本件被害者らは、

事故当時は満8才余の普通健康体を有する男子であり、また、

当時すでに小学校2年生として、日頃学校及び家庭で

交通の危険につき充分訓戒されており、

交通の危険につき弁識があつたものと

推定することができるというのであり、

右認定は原判決挙示の証拠関係に照らし肯認するに足る。

 

右によれば、本件被害者らは事理を弁識するに足る

知能を具えていたものというべきであるから、原審が、

右事実関係の下において、進んで被害者らの過失を認定した上、

本件損害賠償額を決定するにつき右過失をしんしゃくしたのは正当である。

 

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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