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【民法判例】名誉侵害と侵害行為の差止請求権 (昭和61年6月11日最高裁)

名誉侵害と侵害行為の差止請求権

(昭和61年6月11日最高裁)

事件番号  昭和56(オ)609

 

この裁判では、

名誉侵害と侵害行為の差止請求権について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、

頒布等の仮処分による事前差止めは、

裁判の形式によるとはいえ、口頭弁論ないし

債務者の審尋を必要的とせず、立証についても

疎明で足りるとされているなど簡略な手続によるものであり、また、

いわゆる満足的仮処分として争いのある

権利関係を暫定的に規律するものであって、

非訟的な要素を有することを否定することはできないが、

仮処分による事前差止めは、

表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく

事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、

個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、

当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の

被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して

発せられるものであって、右判示にいう

「検閲」には当たらないものというべきである。

 

人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について

社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、

損害賠償(民法710条)又は名誉回復のための処分(同法723条)を

求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、

加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、

又は将来生ずべき侵害を予防するため、

侵害行為の差止めを求めることが

できるものと解するのが相当である。

 

けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、

人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に

排他性を有する権利というべきであるからである。

 

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌

その他の出版物や放送等の表現物が

その自由市場に出る前に抑止して

その内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又は

その到達を遅らせてその意義を失わせ、

公の批判の機会を減少させるものであり、また、

事前抑制たることの性質上、

予測に基づくものとならざるをえないこと等から

事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、

実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、

表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する

憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ

許容されうるものといわなければならない。

 

出版物の頒布等の事前差止めは、

このような事前抑制に該当するものであって、

とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する

評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、

そのこと自体から、一般にそれが

公共の利害に関する事項であるということができ、

前示のような憲法21条1項の趣旨に照らし、

その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み

憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、

当該表現行為に対する事前差止めは、

原則として許されないものといわなければならない

 

ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、

又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、

被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、

当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、

有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、

かかる実体的要件を具備するときに限って、

例外的に事前差止めが許されるものというべきであり、

このように解しても上来説示にかかる憲法の趣旨に反するものとはいえない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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