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【経済法判例】ジュース表示事件 (昭和53年3月14日最高裁)の要点をわかりやすく解説

ジュース表示事件

(昭和53年3月14日最高裁)

事件番号  昭和49(行ツ)99

 

この裁判では、

不当景品及び不当表示防止法10条6にいう

「第一項の規定による公正取引委員会の

処分について不服があるもの」の意義と、

不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう

一般消費者と公正取引委員会による

公正競争規約の認定に対する同法10条6項に基づく

不服申立の利益について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)10条1項により

公正取引委員会がした公正競争規約の認定に対する

行政上の不服申立は、これにつき行政不服審査法(以下「行審法」という。)の

適用を排除され(景表法11条)、専ら景表法10条6項の定める

不服申立手続によるべきこととされている(行審法1条2項)が、

行政上の不服申立の一種にほかならないのであるから、

景表法の右条項にいう「第1項……の規定による

公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、

一般の行政処分についての不服申立の場合と同様に、

当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、

すなわち、当該処分により自己の権利若しくは

法律上保護された利益を侵害され又は

必然的に侵害されるおそれのある者をいう、

と解すべきである。

 

けだし、現行法制のもとにおける行政上の不服申立制度は、

原則として、国民の権利・利益の救済を図ることを

主眼としたものであり、行政の適正な運営を確保することは

行政上の不服申立に基づく国民の権利・利益の救済を通じて

達成される間接的な効果にすぎないものと解すべく、

したがって、行政庁の処分に対し不服申立をすることができる者は、

法律に特別の定めがない限り、当該処分により

自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は

必然的に侵害されるおそれがあり、その取消等によって

これを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られるべきであり、

そして、景表法の右規定が自己の法律上の利益にかかわりなく

不服甲立をすることができる旨を特に定めたもの、すなわち、

いわゆる民衆争訟を認めたものと解しがたいことは、

規定の体裁に照らし、明らかなところであるからである。

 

ところで、右にいう法律上保護された利益とは、

行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として

行政権の行使に制約を課していることにより

保障されている利益であって、それは、

行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として

行政権の行使に制約を課している結果たまたま

一定の者が受けることとなる反射的利益とは

区別されるべきものである。

 

この点を公正競争規約の認定に対する不服申立についてみると、

景表法は、私的独占の禁止及び公正取引の

確保に関する法律(以下「独禁法」という。)が禁止する

不公正な取引方法の一類型である不当顧客誘引行為のうち

不当な景品及び表示によるものを適切かつ

迅速に規制するために、独禁法に定める

規制手続の特例を定めた法律であって、

景表法1条は、「一般消費者の利益を保護すること」を

その目的として掲げている。

 

ところが、まず、独禁法は、

「公正且つ自由な競争を促進し……

一般消費者の利益を確保するとともに、

国民経済の民主的で健全な発達を

促進することを目的とする。」と規定し(1条)、

公正な競争秩序の維持、すなわち公共の利益の実現を

目的としているものであることが明らかである。

 

したがって、その特例を定める景表法も、本来、

同様の目的をもつものと解するのが相当である。

 

更に、景表法の規定を通覧すれば、同法は、

3条において公正取引委員会は

景品類の提供に関する事項を制限し又は

景品類の提供を禁止することができることを、

4条において事業者に対し自己の供給する商品又は

役務の取引について不当な表示を

してはならないことを定めるとともに、

6条において公正取引委員会は3条の規定による制限若しくは

禁止又は四条の規定に違反する行為があるときは事業者に対し

排除命令を発することができることを、

9条1項、独禁法90条3号において排除命令の違反に対しては

罰則の適用をもつてのぞむことを、それぞれ定め、また、

景表法10条1項において事業者又は事業者団体が

公正取引委員会の認定を受けて公正競争規約を締結し又は

設定することができることを定め、

同条2項において公正取引委員会が

公正競争規約の認定をする場合の制約について定めている。

 

これらは、同法が、事業者又は事業団体の権利ないし

自由を制限する規定を設け、しかも、

その実効性は公正取引委員会による右規定の適正な運用によって

確保されるべきであるとの見地から公正取引委員会に

前記のような権限を与えるとともに

その権限行使の要件を定める規定を設け、

これにより公益の実現を図ろうとしていることを

示すものと解すべきであって、

このように、景表法の目的とするところは公益の実現にあり、

同法1条にいう一般消費者の利益の保護も

それが直接的な目的であるか間接的な目的であるかは別として、

公益保護の一環としてのそれであるというべきである。

 

してみると、同法の規定にいう一般消費者も

国民を消費者としての側面からとらえたものというべきであり、

景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、

公正取引委員会による同法の適正な運用によって

実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通しても

つにいたる抽象的、平均的、一般的な利益、換言すれば、

同法の規定の目的である公益の保護の結果として

生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であって、

本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを

目的とする法規により保障される

法律上保護された利益とはいえないものである。

 

もとより、一般消費者といっても、

個々の消費者を離れて存在するものではないが、

景表法上かかる個々の消費者の利益は、

同法の規定が目的とする公益の保護を通じ

その結果として保護されるべきもの、換言すれば、

公益に完全に包摂されるような

性質のものにすぎないと解すべきである。

 

したがって、仮に、公正取引委員会による

公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、

一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によって

得られるべき反射的な利益ないし

事実上の利益が得られなかったにとどまり、

その本来有する法律上の地位には、

なんら消長はないといわなければならない。

 

そこで、単に一般消費者であるというだけでは、

公正取引委員会による公正競争規約の認定につき

景表法10条6項による不服申立をする

法律上の利益をもつ者であるということはできないのであり、

これを更に、「果汁等を飲用するという点において、

他の一般の消費者と区別された特定範囲の者」と限定してみても、

それは、単に反射的な利益をもつにすぎない

一般消費者の範囲を一部相対的に限定したにとどまり、

反射的な利益をもつにすぎない者であるという点において

何ら変わりはないのであるから、

これをもって不服申立をする法律上の利益をもつ者と

認めることはできないものといわなければならない

 

また、上告人らの主張する商品を正しく特定させる権利、

よりよい取引条件で果汁を購入する利益、果汁の内容について

容易に理解することができる利益ないし表示により

内容を知って果汁を選択する権利等は、ひつきよう、

景表法の規定又はその適正な運用による

公益保護の結果生ずる反射的利益にすぎないものと解すべきであって、

これらの侵害があることをもって不服申立をするについて

法律上の利益があるものということはできず、上告人らは、

本件公正競争規約の認定につき景表法10条6項に基づく

不服申立をすることはできないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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