リラックス法学部 >不動産登記法をわかりやすく解説>仮登記とは?
仮登記とは?
仮登記とは、文字どおり仮の登記ですが、
この登記にどんな意味があるかといいますと、
順位を保全する効力があります。
前提として、不動産登記は
その順位、スピードが非常に重要
なものだと認識してください。
登記には対抗力があります。
それは「先に登記を備えた者が勝つ」
ということですので、
どちらが先に登記を入れたかで、
勝負が決まる場面が多々あるわけです。
(もちろん、書類を偽造などして
全くのでっち上げでされた登記は無効なので、
そのような登記を真っ先にしても負けますが)
例えば甲不動産を所有しているものが、
甲不動産の売買契約をAとし、
その後、甲不動産の売買契約を
Bともしたとします。
どちらとも契約書を交わし、
不動産の購入代金を払ったとします。
後にAとBが
「これはオレが不動産だ」
と争う場面になった時、
甲不動産の所有者として
認められるのは先に登記をした者です。
これは契約の前後や、
支払いの前後などと関係なく、
登記の先後で勝敗が決まります。
これは担保権(抵当権など)の登記もそうで、
抵当権の登記が入った順番に
1番、2番と順番が決まります。
ですので、
「まだ担保に入っていない不動産の
1番抵当権をつけるなら」
ということで、お金を貸したとしても、
同様の契約を他所でしていた者に
登記をされると
2番抵当権(1番の抵当権が弁済を
受けた後に残った額を回収できる)
という立場になってしまいます。
もちろん、不動産を二重譲渡した者、
抵当権が他についていないと
偽って契約した者に
詐欺や契約違反等の債権的な
責任追及をすることはできますが、
不動産に関する物権については他の者に
劣後するという非常に不利な立場になります。
このようなこともあり、
不動産登記の順位は非常に重要です。
その順位を確保するための手段が仮登記ということになります。
仮登記を入れてから、
次に別の者が本登記で登記を入れたとしたとしても、
仮登記を本登記にする際は
その順位を後の本登記の権利者に対抗することができます。
仮登記はそのように
順位を保全する効力だけがあり、
仮登記のままでは対抗力はありません。
では、仮登記はどのような場合に
できるかといいますと、
仮登記ができる場合を
不動産登記法105条が規定しています。
(仮登記)
第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、
当該保存等に係る登記の申請をするために
登記所に対し提供しなければならない情報であって、
第二十五条第九号の申請情報と併せて
提供しなければならないものとされているもののうち
法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は
消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのもの
その他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
要するに、権利変動は生じているものの、
書類が集まらない時と、
予約などでまだ権利変動が生じていない時に
仮登記できるとしてあります。
仮登記も原則として、
登記権利者と登記義務者の共同申請となります。
ただし、登記義務者の承諾のある場合や
裁判所の仮登記を命じる処分がある場合は、
登記権利者が単独で仮登記をすること
ができます。
(仮登記の申請方法)
第百七条
仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び
次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、
第六十条の規定にかかわらず、
当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
2 仮登記の登記権利者及び登記義務者が
共同して仮登記を申請する場合については、
第二十二条本文の規定は、適用しない。
「第22条本文の規定は、適用しない」
とは登記識別情報を提供する必要はない
ということです。
ちなみに、かつては
予告登記というものがあり、
予告登記と仮登記をさして予備登記と
呼んでいましたが、予告登記が廃止され、
予備登記という言葉もつかわれなくなりました。
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