リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 第9話 法定追認についてわかりやすく解説

 

前回は取消しのできる法律行為でも、

追認をすればその行為は完全に有効になり、

取り消す事ができなくなるというお話をしました。

 

追認には、「追認する」

という意思表示をする以外に、

法律上、当然に追認したと

みなされるものがあります。

 

それを「法定追認」といいます。

 

今回はその法定追認について

説明していきたいと思います。

 

民法の125条に法定追認に関する規定があります。

(法定追認)

第百二十五条  

前条の規定により追認をすることができる時以後に、

取り消すことができる行為について

次に掲げる事実があったときは、

追認をしたものとみなす。

ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

 

一  全部又は一部の履行

二  履行の請求

三  更改

四  担保の供与

五  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

六  強制執行

 

順番に解説していきたいと思います。

①全部又は一部の履行

たとえばゲームの売買でいうと、

ゲームの買主は

売買代金の全部又は一部を支払う事

ゲームの売主はゲームを買主に引き渡す事

が履行にあたります。

 

未成年者がゲームの売買契約をして、

成人してからその代金を支払ったり、

ゲームを買主に引渡した場合は

追認したものとみなされます。

 

前回追認は、取消しの原因となっていた状況が

消滅した後にしなければ、その効力を生じない。」

というお話をしました。

 

つまり未成年者は成人してからでないと

追認できないというものです。

 

これは法定追認の場合も同様です。

 

つまり、未成年者が代金を支払ったり、

ゲームを引渡したりしても

法定追認は成立せず、

「取り消すことのできる法律行為」

という状況は続きます。

この事は次からの事項でも共通です。

 

②履行の請求

こちらは①の行動を相手にうながす事です。

 

つまり「代金を払ってくれ」「ゲームをくれ」

と相手に請求することが履行の請求です。

 

③更改

更改とはマニアックなので、

初学者の方は無視していい言葉ですが、

ざっくり言えば

「ドラクエ3」

の売買契約だったものを

「マリオ3」

の売買契約に代えたという感じです。

 

 

④担保の供与

担保とは「借金のカタ」

ということです。

 

手持ちのお金がないので、

お金の代わりに物を預けるような行動です。

 

⑤取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

これは「ゲームの代金は

オレじゃなく兄貴に払ってくれ」とか

「ゲームはオレじゃなく弟に渡してくれ」

というように、

売買代金を受け取る権利や

ゲームを受け取る権利を他人に譲り渡すことです。

(なお、ここで少し説明しますが、

このように相手の行為を請求できる権利を債権といい、

この債権を譲り渡すことを「債権譲渡」といいます)

 

⑥強制執行

強制執行をちゃんと説明すると

莫大な文量になるので、

ザックリ言いますと

裁判所の力を使って、

強引に相手に履行させることです。

 

ということで、このような6つの行為をした場合は、

追認したものとみなされます。

 

この6つは要するに

「ちゃんと契約する気がある」

と行動からわかる場合です。

 

行動からわかるなら、口で言わなくても

追認でいいじゃないかという事です。

 

「ただし、異議をとどめた場合は

この限りではない」

 

というただし書きがあります。

 

「今、代金は払う。

しかしゲームを買う気はホントはないからな」

というような事です。

 

「ホントはあんたなんか

大っきらいなんだから」

と言ってくっついてくる

ツンデレをイメージするかもしれませんが、

必ずしも、そういう事ではありません。

 

例えば詐欺で取消ししようと考えていて、

相手が争った場合、

裁判で詐欺が認められて勝てれば

取り消せるのでいいですが、

勝てなかった場合、

契約は有効なわけです。

 

その際、代金を払っておらず

支払い期日をすぎていると

遅延損害金という利息みたいなのがついて

結局最初の額より払う額が増えてしまうわけです。

 

ですので、

「一応払うけど、

売買契約の成立を認めたわけじゃないからな」

という場合は法定追認とはならないという事です。

(ちなみに代金を相手に払わず、国に預ける

「供託」というシステムもあります)

 

という事で、今回は「追認する」と言葉に出さなくても

追認とみなされる法定追認について説明してまいりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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