被害者の自賠法16条1項に基づく請求権と社会保険者の代位による請求権の優劣

(平成20年2月19日最高裁)

事件番号  平成18(受)1994

 

この裁判では、

被害者の自賠法16条1項に基づく請求権と

社会保険者の代位による請求権の優劣について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

被害者が医療給付を受けてもなお

てん補されない損害(以下「未てん補損害」という。)について

直接請求権を行使する場合は,他方で,

市町村長が老人保健法41条1項により

取得した直接請求権を行使し,

被害者の直接請求権の額と市町村長が取得した

直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,

被害者は,市町村長に優先して自賠責保険の保険会社から

自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき

損害賠償額の支払を受けることが

できるものと解するのが相当である。

 

その理由は,次のとおりである。

 

自賠法16条1項は,同法3条の規定による

保有者の損害賠償の責任が発生したときに,

被害者は少なくとも自賠責保険金額の限度では

確実に損害のてん補を受けられることにして

その保護を図るものであるから(同法1条参照),

被害者において,その未てん補損害の額が

自賠責保険金額を超えるにもかかわらず,

自賠責保険金額全額について

支払を受けられないという結果が生ずることは,

同法16条1項の趣旨に沿わないものというべきである。

 

老人保健法41条1項は,

第三者の行為によって生じた事由に対して医療給付が行われた場合には,

市町村長はその医療に関して支払った価額等の限度において,

医療給付を受けた者(以下「医療受給者」という。)が

第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する旨定めているが,

医療給付は社会保障の性格を有する公的給付であり,

損害のてん補を目的として行われるものではない。

 

同項が設けられたのは,医療給付によって

医療受給者の損害の一部がてん補される結果となった場合に,

医療受給者においててん補された損害の賠償を重ねて

第三者に請求することを許すべきではないし,他方,

損害賠償責任を負う第三者も,てん補された損害について

賠償義務を免れる理由はないことによるものと解され,

医療に関して支払われた価額等を市町村長が取得した

損害賠償請求権によって賄うことが,

同項の主たる目的であるとは解されない。

 

したがって,市町村長が同項により取得した

直接請求権を行使することによって,

被害者の未てん補損害についての直接請求権の行使が

妨げられる結果が生ずることは,

同項の趣旨にも沿わないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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