取締役の善管注意義務違反

(平成22年7月15日最高裁)

事件番号  平成21(受)183

 

この裁判では、

取締役の善管注意義務違反について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件取引は,AをBに合併して不動産賃貸管理等の事業を

担わせるという参加人のグループの事業再編計画の一環として,

Aを参加人の完全子会社とする目的で行われたものであるところ,

このような事業再編計画の策定は,

完全子会社とすることのメリットの評価を含め,

将来予測にわたる経営上の

専門的判断にゆだねられていると解される。

 

そして,この場合における株式取得の方法や価格についても,

取締役において,株式の評価額のほか,取得の必要性,

参加人の財務上の負担,株式の取得を円滑に進める必要性の程度等をも

総合考慮して決定することができ,その決定の過程,内容に

著しく不合理な点がない限り,取締役としての

善管注意義務に違反するものではないと解すべきである。

 

以上の見地からすると,

参加人がAの株式を任意の合意に基づいて

買い取ることは,円滑に株式取得を進める方法として

合理性があるというべきであるし,その買取価格についても,

Aの設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば,

払込金額である5万円を基準とすることには,

一般的にみて相応の合理性がないわけではなく,

参加人以外のAの株主には参加人が事業の遂行上

重要であると考えていた加盟店等が含まれており,

買取りを円満に進めてそれらの加盟店等との友好関係を

維持することが今後における参加人及び

その傘下のグループ企業各社の

事業遂行のために有益であったことや,

非上場株式であるAの株式の評価額には相当の幅があり,

事業再編の効果によるAの企業価値の増加も

期待できたことからすれば,

株式交換に備えて算定されたAの株式の評価額や

実際の交換比率が前記のようなものであったとしても,

買取価格を1株当たり5万円と決定したことが著しく

不合理であるとはいい難い。

 

そして,本件決定に至る過程においては,

参加人及びその傘下のグループ企業各社の全般的な

経営方針等を協議する機関である経営会議において検討され,

弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践されているのであって,

その決定過程にも,何ら不合理な点は見当たらない。

以上によれば,本件決定についての上告人らの判断は,

参加人の取締役の判断として著しく

不合理なものということはできないから,

上告人らが,参加人の取締役としての

善管注意義務に違反したということはできない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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